
マッチ売りの少女と死神さん
第3章 1月1日…死神さんに注がれています
あとの二人がやおら椅子から立ちあがる。
サラの目の前にはお酒を飲んだ大人の男性三人。
ホーリーの時とも違う、分かりやすい身の危険を感じて、サラは威圧感に身をすくませた。
「ま、来いよっ」
軽々と片腕で抱き上げられた少女の視界にはホーリーがいた。
サラが男性の肩越しに、悲壮な声で助けを求める。
「あ、ああ…いや…っ。 ホ、ホーリーさんっ! 助けて!!」
「知らないよお。 勝手に君がしたことなんだから、自業自得じゃあないの?」
「それは…そ……れでも」
目を落としたサラが口ごもる。
尻すぼみに消えかかる声がいっそう震えた。
「………で、でも…だけど……ホーリーさんは…私を好きって言ったわ」
「それが何の関係があるのお?」
いつも通りの薄い笑いを浮かべた表情、と。
抑揚のない彼の返答を聞いてサラはあ然とした。
(………この人の、『愛』や『好き』という言葉って、一体どんな意味なの……?)
彼は眉ひとつ動かしていない。
それどころか、のらりくらりと椅子から立ち上がり、トーマスに向かって親しげに話しかける始末。
「ねえ、そんなロープ持って何するのお」
「抵抗されたら厄介だからなあ。 悪く思うなよ」
「わあ…可哀想。 なるべく優しくしてあげてねえ」
そんな会話が遠くから聞こえた。
