
マッチ売りの少女と死神さん
第3章 1月1日…死神さんに注がれています
「そこは絶世の美少女というに相応しいだろう。 上品で白い額から伸びる少しばかり生意気そうに上向いた鼻筋のラインは、生前に街一番の美貌と謳われた母親譲りだし、何よりもこの輝かんばかりの鳶色の瞳。 ああ、しかしまずはそうだね。 ここは花びらのように可憐な彼女の唇の魅力から語るべき」
「ほ、ホーリーさんっ!!!」
「………ん? どうしたのお、サラちゃん」
「わ、私が勝手に店を出たことは謝ります、謝りますから、それ以上はもう、許してください…っ!!」
サラが夕焼けよりも赤い顔をして思わず悲鳴をあげた。
これはなんの拷問なのだろうか。
穴があったら入りたいという言葉があるが、サラはいっそ穴の中に入ったまま目張りをして、永眠したい気持ちになった。
「だって君が侮辱されたんだよお?」
「ぶ、侮辱されたかどうかは、私が決めますからっ!!」
辱められているのはむしろ今の方かもしれない。 とサラは思う。
「サラちゃんは謙虚なのかなあ? 僕にいたっては、世界共通認識の基準を持ってると思うんだけど」
(か、彼の世界基準とは…一体……?)
サラは…というか、おそらくこの場の全員が困惑していた。
あとの二人の男性もトーマスとサラを戸惑って見ている。
「………おい、トーマスう…この娘も…さっきから何一人で喋ってんだよお」
「の、飲み過ぎかあ?」
「ン、あれえ? それにしてもずいぶん可愛いね、君のソレ。 そんなんじゃ女の子に逃げられない?」
再びホーリーの声、と。
「は…ハアッ!? フツーだろ、放っとけ!」
それからトーマス。
ひきつった怒鳴り声にホーリーの声が重なる。
「……ううーん…じゃあさあ。 たまには女の子の気持ちになってみようよお、ねえ?」
「へっ、な…何、ちょっと…オイっ、イテエッ!!」
「ふふっ、すぼまっちゃってカーワイイ……初めてなんだね…? やさしーくしてあげるよお」
「ヒッ!!??? お、おい。 お前のソレ…形、おかしかねえか? つか、冗談だろ。 なにおっ立て」
「あんまりカワイイから優しくするのやーめたあ。 ん? これ、パン生地伸ばす棒だよね。 君のフニャチンの三倍はあるねえ…」
「なっ!?………あ”あ”あ”っあ”っあ”あ”あ”、ひ、ヒイイッー!!!」
