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マッチ売りの少女と死神さん

第3章 1月1日…死神さんに注がれています



「サラちゃん? 僕、ダメって言わなかったっけ?」

「え………」

「なーんで僕の言いつけを聞かなかったのかなあ」

ふっと目を細めるホーリーだったが、圧を超えていっそ脅しのようなものを感じた。
薄らと笑みさえ浮かべているいつもの表情。
彼に叩かれた時のことを思い出す。
あんな……こんな風に冷静に他人を傷付ける人をサラは知らなかった。

「聞いてるんだけど」

ホーリーはサラが勝手に宿を出たことに対して、気に触っているのだと思った。

「…ち…ちがっ……私は、ただ」

彼女の両脇に手を置いた彼が、サラの耳に口をつける。

「この男とおんなじ目に合いたいなら、早く言えばいいのに……そうそう。 コイツの死因は敗血症だねえ。 腐って明日死ぬよお」

クククという彼の冷たい笑いが鼓膜にひびいて、めまいと一緒にサラの身が凍る。

「……また震えてる。 かわい……」

耳のふちを、突然尖った舌先で舐めあげられ、「やんっ」と、およそ今の心情に相応しくない声が出てしまう。

(な、なんでえっ……)

今朝から自分の体がおかしい。
こんな残酷で冷徹で、嘘つきで血も涙もない人に。

(私はなぜこうなってしまったの?)

色々な気持ちがないまぜになって、いっそ泣きわめいてしまいたくなる。
サラの喉の奥が傷んで大きくしゃくりあげた。
それなのに、彼の小さな吐息を……深い部分で感じてしまう自分がいる。

「お陰で興奮しちゃったよお。 サラちゃんには僕のをぶち込んであげようか……?」

間髪入れずにサラがブンブンとかぶりを振った。
彼女の耳に口をつけたままのホーリーが静かに話し続ける。

「……ってね。 君がそれに拒否感を示す理由を僕は知ってる。 単にふしだらとかいうものじゃなくてさあ。 そんなサラちゃんに、さっきいいモノ手に入れたんだあ」

うつ伏せのサラに覆いかぶさったまま、ホーリーがサラの目の前に差し出してきたもの。
それは指の大きさほどの、何かの大きな種にみえた。

「舐めてごらんよお」


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