
マッチ売りの少女と死神さん
第3章 1月1日…死神さんに注がれています
「じゃあ言うけどさ、正確には僕が原因じゃないよお。 奴のアレ見た? 性病かかりまくってるし…もーお、手遅れ。 自業自得ってやつだよ。 ヤラれなくって良かったねえ?」
彼の言葉に驚いた。
サラはホーリーの所業のせいで、トーマスが死んでしまうのだと思っていたからだ。
「病気………」
サラは先ほどその部分が少し目に入ったものの、すぐに目を逸らしてしまった。
また、見慣れていないものだからよくは分からなかったのだ。
彼女は神妙に目を伏せた。
「………気の毒ですね」
「だから君も、相変わらずのお人好しは」
「あれ……? でもそしたら、なんでホーリーさんはこの人にひどいことをしたんですか」
「酷い?」
「わざわざ付いてきてまで、亡くなる方ならもっと優しく」
「はっ。 僕に無断で君に触って、あまつさえ侮辱しておいて、優しくしろだって?」
「………」
きょとんとしてホーリーを見るサラだった。
彼女の表情に同じく、ん? と彼女を見返したホーリー。
「え、ええと……それは、つまり」
ええと、ええと。
と脳内を整理しているサラを遮り、彼が作業台の反対側に回る。
「ほら、次はこっちの手。 くだんないこと話してないで……何がおかしいのさ」
「いっ…いえ。 ホーリーさんって……面倒くさいんですね」
「はあっ?」
「か、可愛いというか…」
「僕を馬鹿にしてるの……それ以上笑うとまた犯すよ」
「っんむ…」
ホーリーが本当にムッとしてそうだったので、慌てたサラは片手で口を塞いだ。
おそるおそるホーリーを見ると彼は再び作業に注力している。
指先がたどたどしく紐を解いている。
時々髪をぐしゃぐしゃと掻き、とても不機嫌そうだ。
サラはとっくに彼が怖いとは感じていなかった。
「………変なこと聞いていいですか、ついでに」
「なあに」
「あの…そのう…か、形が…少し、違うのですね」
ホーリーが不思議そうにサラを見る。
真っ赤な顔でモゴモゴしているので、「ああ」とホーリーが察した。
