
マッチ売りの少女と死神さん
第3章 1月1日…死神さんに注がれています
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「グフ…ふふふ。 君は後ろからが好きなんだねえ」
「………」
「後ろからと言えばさあ。 今朝みたいのじゃなくてさ、女性側が後ろ向きで肘を這った体位って、ドギースタイルとも言うんだけど。 昨晩の会話を思い出すねえ」
サラとしては、ホーリーとの初体験など思い出したくなかったのだが、なぜか彼が照れくさそうに話し続ける。
「君が犬を好きな理由も分かって良かったけど、僕としては」
「その話、いつ終わるんですか」
「ん、そもそも何の話してたっけ………?」
サラが冷たく問いを投げかけると、ホーリーが自分の視線を斜め上の空に彷徨わせる。
(そんな理由で犬を好きなわけないし。 なんでこの人って、すぐにいかがわしい方向に走っていくのかしら)
しかもそこからなかなか戻ってこないのが困りものである。
今も呆れて彼を見ているサラに、感じ入るものでもあったのか。 胸を抑えながら熱いまなざしで彼女を見つめていた。
「ええと……私の家のことで聞きたいことがある。 そう言いませんでしたっけ?」
「ああ、そうそう。 面と向かっては言い難いだろうから、僕がコッチに移動したんだよね」
彼がポンと手を打った。
宿の部屋の中。 ベッドの端に腰を掛けているサラから少し離れた所で、ホーリーが備え付けの椅子に座っていた。
