
マッチ売りの少女と死神さん
第4章 1月1日…それはかわいい君のせい
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二人がパン屋から宿へと戻る途中に、ある人物と出会った。
「おねえちゃん!!」
目をキラキラ輝かせてサラに飛び付いて来たのは、宿の近くで、男たちに絡まれていた様子の少女だった。
あけっぴろげな性格なのか。 嬉しそうにサラの両手を取る。
「探したよ、さっきはありがとう!」
「えっ……わざわざ探してくれてたの?」
「だって、パンを盗ったのは、ホンのイタズラのつもりだったんだよ。 そしたら家でパパが、私を叱ったの。 なんでパパを呼ばなかったのかって。 関係ない人を巻き込んで逃げたのかって」
サラと同じに、真っ直ぐな目の少女だとホーリーは感じた。
サラはボーッと後ろをついてきていたホーリーにことの次第を説明しようとした。
するとホーリーは無言のまま、顎でサラの後ろを指す。
「どうもこの度は本当にありがとうございます。 うちの娘が世話になったようです」
そう言ってサラに向かい、丁寧に頭を下げたのは壮年の男性である。
ホーリーはこの子の父親にしては身なりの良い人物だと思った。 次いで、申し訳なさそうに説明を加えてきたので出来事の経緯を早々に理解した。
「妻に先立たれてから、ちっともこの子を構ってやれなくて。 今日もやっと国外の仕事から帰って来たんです」
「サラちゃん、君にお礼をしたいんじゃないのお? 気にしないで話しといでよ。 僕が加わると、ほら。 変な目で見られちゃうからさ」
彼らは健康でまっとうな人間らしい。
男性もホーリーの姿は眼中に無いようだ。
「あ、ホーリーさ……」呼び止めようとするサラに背を向け、「先に宿に戻ってるよ」とホーリーは歩き出した。
