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マッチ売りの少女と死神さん

第4章 1月1日…それはかわいい君のせい


怒っているのか拗ねているのか。
サラがなかなか顔をあげようとしない。
ホーリーはサラに対する性欲はもちろん、同じぐらいに好奇心も果てしなく旺盛だった。

(サラちゃんは今、何を考えているんだろう?)

そこで、昂ぶりをなけなしの理性で抑えたホーリーは、辛抱強くサラの話に耳を傾けることにした。

「私…もう、昨日みたいな、あんなのは嫌ですから」

「そう?」

「体も…こ、心も痛いもの。 もちろん、い…いやらしいことも」

「そうかなあ? じゃあ試してみようかあ」

「な、何をですか?」

期待を与えて失望させる。
ホーリーがお気に入りのサラは、これに対してたまらない反応を見せてくれるのだが、反面、行為の良さを追求すると逆がいい。
実際にしてみて、怖がってガチガチに緊張しきっているよりも、トロトロ状態のサラの方がホーリーとしても、ずっと好みだと気付いた。

(何よりも長く楽しめるしねえ)

ホーリーが心の中でにやけた。

「もしも本当に痛いのが嫌なら、僕はそんなことはしないって約束するよお。 今から君を抱いて、サラちゃんが苦痛を嫌がったなら今後、痛いことをしない」

「そ、そんなの当然、嫌に決まってるわ!」

サラは先程、行為自体を嫌がった気がしたが。
……例えばだ。
人に対し、嫌な提案をすると当然断られるものだ。
他方で、嫌な方とより嫌な方の選択肢を与えてみる。
すると人というものは、前者の嫌な方がまだずっとマシだと考える心理が働くものである。

ホーリーは相変わらずのサラの素直さに、笑いを堪えつつ言葉を続けた。

「何なら僕は、もう君に手を出さない。 そういえば、婚前交渉を否定していたし? さっき君がおかしくなったのは、単に催淫剤……薬のせいだしねえ。 君は本来、貞淑な女性なのだから」

「く、薬…そう、そうよ……きっとそうなのよね。 それだけなんだわ!」

妙に納得した表情で頷くサラだった。
それに引っかからなくもなかった。
だがここは、自分にとって都合の悪い、彼女の憂慮をすっかり取り除いておくべきだろう。 ホーリーは状況を整理した。


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