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マッチ売りの少女と死神さん

第4章 1月1日…それはかわいい君のせい


ホーリーの言うそこ、とは。
サラの太腿ほどの高さの浴槽のへりである。
手をついて後ろ向きになること、それはホーリーに向かってお尻を突き出す格好をさらすことを意味する。

「そ……そんな。 なんで? 嫌です」

当然サラは嫌悪もあらわに抵抗を示した。

「あのねえ、サラちゃん」

ホーリーは大袈裟めにため息をつきながら、暗い声を落とした。

「僕はこんなでも男だ。 女性よりも欲が強いのは仕方ないとしても……さっきの約束どおり、君をもう傷付けないよう、心を砕いていたつもりだよ」

「……そ、それは…賭けとかで、痛くしないとか…?」

「賭け……ああ、そうだね。 確かにそんなことをしたけど、つい、忘れていたよ。 君を想うあまりに……そう。 君の純潔を奪った僕は、今は心から悔いているんだ。 真心をもって君を労り痛みを与えたくない、そう思うのは当然だ」

よくもまあ思いつきをペラペラと。
ホーリーは自分でも半ば呆れたが、本来自分は口がたつ方だと思っている。
特に相手をやり込める類いの。
性悪な性格を彼自身、自覚している。
ちなみにそんな時は口調も変わるらしい。
サラはパン屋の時と同じく口を挟めずにいる様子だ。

「でもさ、サラちゃんは違うんだね………僕がそんな気持ちで君に触れていたのに、そんな時、君は僕の体を弄びながら、僕を快楽の道具にしていた」

「そ、そんな…だけど…ホーリーさんの方が…隙あらば」

消え入りそうな声でサラが反論しようとする。
ホーリーが顔を背けて声を震わせた。

「そうだね……きっと僕なんかもう、そんな風にしか見られない」

「………」

「今の僕はキスだけでも幸福なのに」

……いい加減に、可笑しくなってきたからだ。


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