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マッチ売りの少女と死神さん

第4章 1月1日…それはかわいい君のせい


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ホーリーは窓際に腰を掛けてガラス戸の向こうを見ていた。

「また雪が降らないかなあ…」

木枯らしを眺めて呟く。
思い切り不道徳な数時間を過ごしたにしては、情緒的なホーリーの発言だった。

サラは室内にあった紙袋の中を覗いていた。
中をごそごそと探る音が聞こえる。

「あれ…これ、洋服ですか?」

そこには女性用のブーツ。
それからコートが入っていた。
サラが取り出すと、それはどちらも白と赤を基調としたものだった。
いかにも良い家に生まれた、年頃の女の子が喜びそうなデザインのものを選んだつもりだ。

「か、可愛い……っ!!」

サラはぱあっと目を輝かせ、ブーツを床に置いて両手で持ったコートを頭上に高く掲げた。

「これを私にですか!?」

「食堂で、身につけてるものを気にしてたみたいだったから。 ほらあそこ、向かいにある女性用の洋品店を見回ってたんだよねえ。 僕、ちゃんと見ないとイメージ出来ないからさ」

ホーリーが自分のこめかみを指先でつつく。

「ホーリーさんは洋服まで作り出せるんですね。 それに、普通のお店の人からはホーリーさんは見えないですもんね……?」

サラの指摘に、ホーリーは困った表情を浮かべて頷いた。

「だよねえ。 買えないどころか、盗んだら現場は服だけ浮いてるみたいになっちゃうしさあ……まあ、宿は数日前、その辺の死にかけの人に借りてもらうよう頼めたんだけど……サラちゃん?」

ホーリーがサラの方に目を向けると、後ろ姿の彼女はコートを広げたまま、途方に暮れたようにそこから動かなかった。

「あれ……僕、何か間違えたかなあ」

サイズや女性の趣味を大きく外したのか。 ホーリーが落胆した声を出した。
サラがはっと何かに気付いたかのようにサラがゴシゴシと自らの顔を肘で擦る。

「いえ、すみません……っ! とても可愛いです。 私、こんな嬉しいプレゼントは何年ぶりで!」

ホーリーの方を振り向いて元気よく返事をした。
彼は赤い目のサラを見て、顔をしかめて憮然とした。



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