テキストサイズ

マッチ売りの少女と死神さん

第4章 1月1日…それはかわいい君のせい


ホーリーはようやく気付いたが、これを聞いたら彼女は傷付き嫌がるだろう。
そんな理由で自分は訊けずにいたのだと。
そしてそんな感情は、気遣いや思いやりなどとは多少異なる。
彼女に対して分かりやすく期待を裏切る行為とも違う。
自分でもはっきりと分からなかった。
自分を見つめるサラの唇が微かに震えていた。

「そ……れでも、ホーリーさんは……私を好きって言ったのですか?」

「そうだよ。 お母さんが亡くなり、ある時から君はお父さんにお酒を買って帰るようになった……最初、お父さんの愛人は君のことを虐めてた。 酔ったお父さんが君をぶつようになってからは、止めたみたいだね」

ホーリーはあえて淡々と話した。

「向こうからすると、代償とか…分かりやすくいうと君に対する鬱憤が晴れた、のかなあ?」

「い…家の中に、私の居場所が無くなってしまいそうな気がしたんです。 お母さんの座っていた場所にあの人がいるのが……嫌で。 お父さんは亡くなった皆を段々忘れて…あの人に夢中になって……私のことも」

「だからお父さんにぶたれるように仕向けたの?」

ずっと彼女を観ていたホーリーは、サラの気持ちが想像できた。
外から帰ってきても自分を一番に迎えてくれる存在がいなくなる。
サラが父親に話しかけようとしても、彼の恋人がそれを阻害していた。

愛情を向けている、または愛情を期待している相手に
無視をされ続けること。
拒絶をされ続けること。

それらは精神への殺人に近い。
……なぜならいくら物理的に近くにいても、その存在を否定されるのだから。
握手を無視されるように、
肩に置いた手を振り払われるように。

するともう、手を伸ばそうとするたびに相手を伺って、しまいにそれを引っ込めるくせがついてしまう。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ