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マッチ売りの少女と死神さん

第4章 1月1日…それはかわいい君のせい


たとえぶたれようと、サラは父親に自分を見て欲しかったのだ。
……何年も前からそんなサラの姿を観ていた。

「あ……あの人は、家からお金を取るし、お父さんにとって良くない人です」

「それは君が決めること? 性に関することに対して、ずっと嫌悪感を持っていたのも」

ホーリーの言葉をサラが遮る。

「っ結婚も、してない……っ!! 昼間っから、お父さんにイヤらしい視線を送って、聞こえよがしに…! 街で、ほ、他の男の人といたのも見たもの」

サラが初めてあからさまに他人を非難した。
そんな彼女をホーリーは痛々しく感じた。
……この子は他人を憎むのに、ちっとも慣れてないのに。
そんな風に出来ていないのに。

「あれは彼女の弟だよ」

彼の言葉にサラが目を見開いた。

「彼女も決していい人間ではないけど……実弟の嫁がずっと寝たきりなんだよね。 初めて弟の嫁がみごもって、死産して倒れてからだから、もう十年かな……? 弟夫婦を面倒みてるうちに、婚期を逃したらしいね」

しばらくとサラは俯いていたが、小さく震えた声でホーリーを見つめる。

「だって。 わ、私を邪魔だって……いつも蔑んだ目で、汚い子だって言ったわ」

「そうだねえ。 母親を亡くしたばかりの子供に言う言葉じゃないよね」

「ほ、ホーリーさんは……私を悪い子だと思いますか……?」

ホーリーは直接それには答えず、優しくも冷たくもない、何の表情も浮かべなかった。

「それを聞いて何になるの? 僕はそういう意味で君を罰する道具にはならないよ」

サラは俯いたまま肩を震わせていた。
正直なホーリーの感想をいえば、これが地獄に落ちるほどの罪なら、天国行きの人間が減りすぎて世界が滅びるだろう。

「君だけじゃない。 誰に対してもね……ただ、サラちゃんは綺麗だよ。 君はとても、綺麗だ」

ホーリーは本心からそう思う。
それから、サラにこの話を訊きづらかったのは、サラが言いたくないことを訊くと、自分を嫌な目で見るようになるかも知れない。 そんなサラを見たくなかったことにも気付いた。




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