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マッチ売りの少女と死神さん

第4章 1月1日…それはかわいい君のせい



室内にしばらく沈黙が続いていた。

「……どうして急にそんなことを聞いたんですか?」

「僕は人の心が読めるわけじゃない。 昨晩もあんな家に帰りたがった君のことが不思議でねえ」

そしてやはり彼女の家は良くない環境だ。
どんな事故が起こってもおかしくないし……予想通り事件に巻き込まれたのだろう。
逆にいえば、あそこさえ避ければ、彼女は死なずに済む未来があるのかも知れない。
心の中でホーリーは思った。

サラは相変わらず押し黙っていた。
ホーリーはそんな彼女に、興味本位で尋ねたわけではないと説明したかったが、どう言えばいいのかと思いあぐねる。

「僕は未来が分からないし……」

言いかけた際に突然、ぐうううう…とサラのお腹から大きな音が鳴った。

「……分からないけど、僕は君の空腹を満たすことはできるかなあ。 くくく、そういえば、今日はろくに食事を摂っていなかったっけ」

「す、すみません……」

サラが床に正座したまま顔を真っ赤にして小さくなった。
昨日と同じに、ホーリーの持ったマッチの火先から、美味しそうなサンドイッチが現れるのに見入る。
彼がクスクス笑いながら彼女に向かって皿を差し出した。

「何度見ても不思議な御業なのですね!」

サラはしみじみ感心した表情で言った。

「御業って…」

「だって一体どんな魔法なのか……あ、中にチキンが入ってます。 美味しい!」

サンドイッチをひと口かじった食べたサラが嬉しそうにパンを頬張る。
皿の上のレタスも口に入れる。

自分でもそんなことを深く考えたことがなかったホーリーは、少しばかり考え込んだ。
言われてみればたしかにこれは、冥界のやり方とは違うからだ。

「魔法というより原理というか。 例えばさ、このマッチってやつ。 複合的なエレメントを瞬時に作り出すエネルギーって、割と凄いんだよね。 僕はそれの仲立ちをしてるだけだと思うんだけどなあ」

と、説明されるも、サラはさっぱり分からなそうな顔をする。

「だって水や空気をすぐに作ることは出来ないでしょ?」

と、補足されても、サラは余計に分からなそうな顔をする。

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