
マッチ売りの少女と死神さん
第4章 1月1日…それはかわいい君のせい
「ここでは今のところ火だけがそう出来るから、単にそれを利用してるんだよ。 ああ、そんなに急いで食べると喉が詰まるよお。 今温かいミルクをあげるから」
「ふ、ふあぃ」
そんなことよりも水分を吸ったパンで、サラの頬がリス並にぱんぱんである。
ホーリーははちみつ入りの甘いミルクを頭に浮かべた。
(うーん。 何かを餌付けるってこんな気分かなあ)
ふとそんなことを思い付き、また笑いそうになったホーリーは、新しいカップを手のひらに持ち直した。
「あれ?」
「どうひたんでひゅか?」
口を両手で覆ったサラが訊くとホーリーが不思議そうに首を傾げた。
「ミルクが冷たい」
「………? 構わないでひゅよ」
ホーリーはもう一度マッチを擦った。
そこから出てきたのはやはり冷たいミルクだった。
「……それじゃ、温かい紅茶と合わせたら、ミルクティーが出来るから」
別に冷たいもので構わなかったが、サラは頷いて待つことした。
すると次はただのお湯が出てきた。
いったん食べ物をごくんと飲み込んだサラは、特段気にしてなさそうだったが、ホーリーは納得いかない様子だった。
三つのカップをテーブルに並べ、何か違いがないかと見比べている。
「ホーリーさんもお腹が空いてるんじゃないですか? ご飯は食べないんですか?」
「いや……僕は基本的に食べないんだ」
彼の答えにサラは驚いた声をあげた。
家族が揃う食事の前に、パンやワインを神にたとえて、家人が祈りを捧げるのはこの国ではごく普通の風景だからだ。
「ま、まさか。 自らの血肉を私に捧げて分け与えてくださっているのですか……はっ、そういえば火がどうとか」
「気味悪い想像止めてよ。 あと違う宗教混ざってない、それ」
ウサギが自分の身を犠牲にして火に飛び込むのは確か仏教だったか。
ついでにいうと、サラは未だに神と死神を、親戚かなにかだと思っているふしがあるとホーリーは思った。
