テキストサイズ

「シャーク×サルベージ」

第3章 「新型機」


海上の空母から連絡が入る

「オーケー! じゃあ最後にもうひとゲームしてから今日の訓練を終えよう!

 ラストはビーコンのスピードを倍にする!
 稼動範囲も倍でいこう!

 いったん、2機とも訓練範囲から離れて、

 10分経ったらエリアに入ってきてくれ
 ラストゲームだ!」



文句を言うクラウディアを無視して、シンシアは機体を反転させた


片方の内蔵インペラーを停止させ、ぐるりと後ろへ回り込む


反転すると再稼働させる


機体の下部のインテークスリットから海水を取り込む

取り込まれた海水はそのまま回転するインペラーへ回り、水中ポンプの要領で押し出される

そして機体後方のジェットノズルから凄まじい勢いの噴流を出して航行する


「用意はいいわ!」


「かかってこい!」


シンシアとクラウディアはラストゲームに備えた


そのとき


2号機から連絡が入る


「ち、ちょっと待って! 近くに何かが近づいてきてる! 待機するわ!」


ノヴァの声は少し緊張していた


1号機と2号機はかなり距離をとっている


シンシアたちも息を潜めている


静寂


マシンの駆動音も何も聞こえない


ときおり、強い海流の振動が伝わるくらいだ



シンシアは海流に流されないようにゆっくりスロットルレバーを引いて、海底の大きな岩場の影に入った


「……なんだろう?」


「ヨーロッパの国々は相変わらず原子力潜水艦を隠密に動かしてるからな
 
 わたしたちだけじゃないってことだ」


「そうね、それに連邦海軍も1枚板じゃないし、なんなら企業連合の〈トランキュリティ〉の派閥の自衛組織かもしれない」


「そうか、落下した機体をサルベージするのは何もわたしたちだけじゃないかもね
 彼らもブラックボックスを狙っているのかも」


シンシアはクラウディアの言葉に返事はせず、空軍時代に戦った〈トランキュリティ軍〉との果てしない空戦を思い出していた


彼らは連邦政府に不信感を抱く沢山の企業が団結した連合組織だ

ローカルな自警団もあれば、
世界をまたにかけるような大規模な企業、
また中小の兵器工場など様々だ


ひとつの組織ではないだけに、どれだけ撃破しても次から次にやってくるのでたちが悪い


ゆっくり退役もさせてくれないのだな、とシンシアはつぶやいた…


ストーリーメニュー

TOPTOPへ