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「シャーク×サルベージ」

第5章 「メガロドン」

ゆっくり降下潜航していく水中専用機ジェロック

操縦桿を握るシンシアは気を楽にしている

まだ本格的なサルベージではなく、あくまで“試し潜り”の段階だ


今後の計画を立てるための事前調査
それが今日の目的だ


そのため本来のパートナー、ノヴァではなく研究員ジェムが搭乗している


宇宙から降りてきたジェムは現場視察に乗り込んできただけで、本来は海上の空母からデータを解析するのだ


「どう、ジェム? 地球の海は」


「海上の波や風はコロニーと全然違って感動するわ、シンシア!
 でも、潜ってしまえば蒸留コロニーと変わらないわね」


「蒸留コロニーって“アサイラム・コロニー”の一画よね? 物流が不便だから直接小惑星を捕獲して資源を取り込むっていう……」


「そうよ、岩石小惑星からは鉄やチタニウムを採掘してるわ
 私の研究所は蒸留施設なので氷の小惑星をコロニーに接続して水や酸素を作り出しているの
 蒸留コロニーもこんな感じよ、真っ暗な水だけの空間、内壁側には設備のライトが点灯しているけどね」


「前任者の代わりに来たんでしょ?
 私もここに来て間がないから前任者を知らないんだけど…」


「……そう、先輩が先に降りてたんだけど
 私のほうに回ってきちゃった
 先輩がサルベージ計画に参加する事になったから蒸留コロニーでは私が仕切れると奮起してたのに、突然どこかへ行ってしまったから仕方なく私が降りてきたの」


「蒸留の研究より地球の海のほうが刺激的じゃない?」


「宇宙では宇宙の刺激があるのよ!
 信じてもらえないかもしれないけど、氷の小惑星の中から生物が見つかったりもするのよ?
 氷漬けのね!」


「ホントに? エイリアンの冷凍保存とか言わないでよ?」


シンシアは当惑し、ジェムは笑った

ジェムは数日前に同じような会話をナオトとしたわね、と思った


「過去の地球の生物が何らかのカタチで宇宙空間に放り出されて凍結した、というのが先輩の研究なの!
 そこには恐ろしいサメ、いやサメのご先祖様なんかも……
 いわゆる氷漬けのタイムカプセルね!」


「本当に…? そんな事が…」


「アナタたちが行っている“落下モビルスーツの回収作業”も言うなれば同じようなタイムカプセルじゃない?
 フィフスルナやアクシズの時の戦況データを回収しようとしているのでしょう?」

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