「シャーク×サルベージ」
第1章 「マリン・ジェガン」
サルベージ作業タンカーに随伴する巨大な空母
甲板には数台の航空機の他にジェガンタイプのモビルスーツの姿もある
甲板のはるか下
海面ギリギリの搭乗口の通路にシンシアのマリン・ジェガンが牽引されていた
マリン・ジェガンは上半身をモビルスーツの姿
下半身側は巨大な水上バイクのような推進機構が組み合わさったような容姿をしている
インペラーを回して航行するジェットポンプ推進となっている
また機体の数ヵ所に外部スクリューがあり、前進だけでなく小回りの効く海中用戦闘機として開発されている
といっても通常のモビルスーツを転用したリサイクルパーツのような機体だ
そのため水圧の問題は以前から懸念されていた
シンシアはラフなタンクトップ姿で海面に浮かぶ自分の機体を眺めていた
そこへ同僚のパイロット、クラウディアが近付いた
クラウディアはショートカットの赤い髪を潮風に揺らしながらシンシアにコーヒーを手渡した
「アンタが持ち帰ったマットのブラックボックスの解析が終わったよ」
「……そう」
シンシアは金髪の長い髪をたなびかせ、意気消沈していた
「作戦司令官と艦長はマリン・ジェガンの耐久性に限界を指摘してる
ようやく新型がまわってくるみたいよ」
「かわいそうなマット……、元々は耐久性を問題提起していたのは彼だったのに……」
「でも、彼のおかげで進展するの
無駄ではなかったわ」
クラウディアは眼の前に落ち込むシンシアをじっと見つめていた
“先月からこのチームに加わったシンシアだけど、本当にこの子空軍の元エースパイロットだったのかしら…?
確かに腕は申し分ないけど……”
クラウディアの前にいるシンシア
まだティーンエイジャーのように若い容姿
タンクトップを突き上げる胸元もささやかなものだ
「……ところで、話しは全然違うんだけど
シンシア、アンタ結婚してるってホントなの?」
「……本当に話しは変わったわね……
艦長にでも聞いたのね、そうよ
夫は港で待ってるわ」
「え? あの東洋人の男の子?」
クラウディアは仕事終わりのシンシアが少年のような顔つきの男の車に乗り込む光景を見たことがあった
「男の子って……、彼は貴女より歳上よ
まぁ、私はさらに上だけどね」