「シャーク×サルベージ」
第5章 「メガロドン」
シンシアが微妙な衝撃波を感じた
ソナーを見ても近づく反応は無い
“カーソンかダニエルがアイツと接触したのかもしれない”
シンシアは“自分ならどう戦うか?”脳内シミュレーションをしてみたが、あまりに情報が少な過ぎて何の対応策も浮かばなかった
巨大生物を撃退するマニュアルなど元々無かったのだから
脳では先のことを予測しようと努め、
身体は今の目の前の対応を迫られる
「スペースノイドさんはよっぽど人間がお嫌いのようね……」
「……地球人には搾取され続けた側の苦しみはわからないわッ!!」
シンシアは会話を続けながらゆっくりと機体を浮上させていく
もし下でカーソンかダニエルが敵と遭遇しているのであれば今のうちに脱出できるはず、だとシンシアは考えた
それにこのサイコパスな女と同じ空気を吸いたくなかった
「わたしも元々はサイド1に暮らしていたの
ロンデニオンって知ってる?」
「知ってるも何も、ネオ・ジオンが根城にしてたから関係者はすべて拘束されたわ
ロンデニオンは暴動が起きてるわ」
「……そう……」
シンシアはロンデニオンに残っている知人の安否が気になった
混乱はまだまだ続くのだろう
「スペースノイドが生きるか死ぬかのギリギリの状況ってときに、あなたたちアースノイドはサーフィンやらサウナやら楽しんでる……
同じ人間同士なのにね、おかしいと思わない?元スペースノイドさん?」
シンシアは問いかけられてナオトの顔が浮かんだ
ちらっとディスプレイを確認する
もう少しで明るい場所まで上がってこれそうだ
暗闇の海溝からは何とか離脱できたようだ
「……自分たちの暮らしが良くないからって、他人の暮らしを陥れようだなんて……
わたしには理解できないわ……
わたしはある計画の実験台になっていた時期かあるの」
シンシアは身の上話を始めた
「人体実験…? なんの?
まさか強化人間の…???」
「そんな最近の話しじゃないわ、一年戦争よりずっと前の事よ
とにかく……わたしの身体にはある種の“呪い”が掛けられてしまっているの
その首謀者に恨みはあるわ
でも、だからといって周りの人々を悲しませようだなんて一度も思った事は無いッ!!」
シンシアは頃合いを見計らって機体を浮上させた