
緋色の罠
第3章 緋の誘惑〜罠
木島さんの横に少し離れて座る。
ティーポットからカップへ紅茶を注ぐと馥郁とした香りが立った。彼の前に、どうぞとカップを置く。
「奥さまは?昼間はいらっしゃらないの?」
「パートに行ってるもので」
「そうなんですね…お子さんは?木島さんが面倒みてるのかしら。今は家でお留守番ですか」
「保育園ですよ。送り迎え担当は僕と妻のスケジュールによって分担してます」
「ああ…」
あれこれ詮索する質問ばかりしてしまうわたしに、木島さんは嫌な顔ひとつしないで、スラスラと答えてくれた。
会話が途切れた。
元はと言えば、雑談するために彼を家に招いた訳ではない。紅茶は単なる口実だ。
でも…どうしよう。
寂しくて誘ってはみたけれど。
「素敵なお庭ですね」
「えっ。あ…ありがとうございます」
急に言われたので、一瞬、何を言われたのかわからなかった。彼の目はリビングの窓から見える我が家の庭に注がれている。
「ガーデニングが趣味なんです」
「全部あなたが手入れをしているのですか」
「そう。主人は全く興味がないし、わたしはほとんど一日家に居るので」
「あのヒガンバナが見えますね」
ソファに座った位置から、勝手に一本だけ生えてきたヒガンバナの緋色が見えた。さっき見たときよりも蕾がほころんだのかもしれない。
「もうすぐ咲きそうですね」
「ええ…」
また会話が途切れた。
膝に置いた手をギュッと握ると少し汗ばんでいた。隣に座っている彼に、自分の鼓動が聞こえてしまいそうなほどドキドキしている。
紅茶のおかわりを勧めようと口を開きかけた時、彼が庭に目を遣ったまま、ポツリと言った。
「僕、この前、聞いてしまったんです」
ティーポットからカップへ紅茶を注ぐと馥郁とした香りが立った。彼の前に、どうぞとカップを置く。
「奥さまは?昼間はいらっしゃらないの?」
「パートに行ってるもので」
「そうなんですね…お子さんは?木島さんが面倒みてるのかしら。今は家でお留守番ですか」
「保育園ですよ。送り迎え担当は僕と妻のスケジュールによって分担してます」
「ああ…」
あれこれ詮索する質問ばかりしてしまうわたしに、木島さんは嫌な顔ひとつしないで、スラスラと答えてくれた。
会話が途切れた。
元はと言えば、雑談するために彼を家に招いた訳ではない。紅茶は単なる口実だ。
でも…どうしよう。
寂しくて誘ってはみたけれど。
「素敵なお庭ですね」
「えっ。あ…ありがとうございます」
急に言われたので、一瞬、何を言われたのかわからなかった。彼の目はリビングの窓から見える我が家の庭に注がれている。
「ガーデニングが趣味なんです」
「全部あなたが手入れをしているのですか」
「そう。主人は全く興味がないし、わたしはほとんど一日家に居るので」
「あのヒガンバナが見えますね」
ソファに座った位置から、勝手に一本だけ生えてきたヒガンバナの緋色が見えた。さっき見たときよりも蕾がほころんだのかもしれない。
「もうすぐ咲きそうですね」
「ええ…」
また会話が途切れた。
膝に置いた手をギュッと握ると少し汗ばんでいた。隣に座っている彼に、自分の鼓動が聞こえてしまいそうなほどドキドキしている。
紅茶のおかわりを勧めようと口を開きかけた時、彼が庭に目を遣ったまま、ポツリと言った。
「僕、この前、聞いてしまったんです」
