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ソルティビッチ

第1章 ソルティビッチ…

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「それでぇ、実はぁ、悠里さんを初めて見掛けた後にぃ…
 つまりはあの初めての夜の前にもぉ、
こっそりとぉ『Bitch』に来たそうなんですよぉ…」
 と、また彩ちゃんが話しをしてきた。

「え、そ、そうなんだ、あの夜が初めてじゃなかったんだぁ?」

「は、はい、そうなんです…
 もう僕は、あ、わたしは悠里さんの事が気になっちゃって、気になっちゃってぇ…」

「え、でもその時は駿くんで?、それとも葵ちゃんで?…
 どっちで来たの?」
 わたしはつい、葵ちゃんと呼んでしまう。

 だって、あまりにも…

 いや、本当に美少女だから…

 わたしのエム的な思考が呼び捨てが出来なくなってしまったみたいであった。

「あ、はい、あの時は…」

 葵で来ました…

「そうなんですよぉ、こんなかわいい美少女の葵が来たら気付く筈なんですけどねぇ」
 彩ちゃんはそう言ってくる。

 確かに、ビアン嗜好の強い彩ちゃんならこんな美少女の葵ちゃんを見逃す筈がないとは思うのだが…

「うん…と、あの夜でした…」

「え、あの夜って?」

 そうあの夜とは…

 以前に寝た男がまた来店し、親しげに話し掛けてきて、わたしが蔑ろに扱い、その男が…
『このヤリマンのクソビッチがぁっ』
 と、捨てセリフを吐いて出て行った夜らしいのだ。

「でも、そんな夜は何度もあるから」  
 と、わたしは卑下して笑う。

「そうですねぇ、悠里さんには日常的てますよねぇ」
 彩ちゃんがそうダメを押す。

「でも、わたしには衝撃的でした、あ、いや、衝撃的な存在感を感じたんです」

 そして、この人ならば…

 この女性ならば…
 
 わたしを…

 ううん、僕、駿と、葵の二人の自分を受け入れてくれるんじゃないか?…

「…いや、受け入れてくれるって、そう感じたんです」

「あ、う、うん…」

 確かにすんなり受け入れてしまった…

「それでぇ、あのわたし達三人の初めての夜があってぇ…」
 また、再び彩ちゃんが話してくる。




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