
いつか、絶望の底から救い出して…
第10章 佐久良舞希①
俺は東京新宿で生まれた──
母さんが言うには、俺は寒い冬に生まれたらしい。
日付は確か12月10日。
外には雪が降っていた。
十二時間による長時間の分娩の末、俺は産声をあげた。
「生まれましたよ。元気な男の子です」
俺を抱えた看護師が、母さんの真横に俺を置く。
母さんは俺を愛おしそうに見つめた。
指先で俺の頬に触れる。
慈愛の瞳で、俺を見つめる母さん。
その目が優しかったことは今でも鮮明に覚えている。
俺は母さんに愛されていた。
隣にはお父さん?らしき人物もいる。
淡い金髪をハーフアップにして、淡い黄色のカーディガンを着てる男性。たぶん父さんだろう。
俺は母さんから父さんの話は、あんまり聞かされなかった。
たぶん女作って逃げた男だからあんまり話したくないのだろう。
前に母さんに父さんのことを聞いたらそう答えた。
なるほどな。だから母さんは父さんの事を話さなかったんだな……
なんだか納得してしまった。
