
いつか、絶望の底から救い出して…
第10章 佐久良舞希①
俺は父さんと母さんに愛情たっぷりに育てられた。
優しくて強い母さん。
強くて逞しい父さん。
どちらも俺を愛していた。
育児は主に母さんが担当していた。
父さんもたまに加勢するけど、毎回失敗して母さんに怒られていた。
記憶の扉はどんどん開いていく──
今まで思い出すことなんかなかった。
いや、思い出したくなかったのだ……
幸せすぎるから……
今はもう亡き思い出だから……
幸せすぎて辛くなるから……
だからずっと閉じ込めていた……
あの頃の思い出はもう取り返せないから……
