
約束~リラの花の咲く頃に~ⅢLove is forever
第6章 契り
契り
莉彩は王と共に王宮に戻った。十年も前に突如として宮殿から姿を消した臨(イム)女官が再び舞い戻ってきた―、このニュースは忽ちにして宮殿内を駆けめぐった。莉彩を再入宮させたのはあくまでも提調尚(チェジヨサン)宮(グン)(後宮女官長)であるということになっていたが、内実は国王その人が連れ帰ったのだという噂が真しやかに語られた。
国王がよもや一介の女官を、しかも十年前に宮殿から逃げるようにいなくなった不届き者を自ら再入宮させたというのは、いかにも外聞をはばかる話だ。それゆえ、王の乳母であった臨尚宮が提調尚宮に頼み込んで再入宮させたという形式を取ったものの、そのような小細工がまかり通るほど後宮は甘い場所ではない。
そのことは、王がそれほどまでに臨女官に執着しているという事実をより強調することにもなった。周囲の視線は莉彩に対して冷たかった。十年前には親友として接してくれていた朋輩女官たちですら、莉彩を見かけると遠巻きにひそひそと囁き交わし、ろくに視線を合わせようともしない。
莉彩が話しかけようとしただけで、若い女官たちは皆、蜘蛛の子を散らすように逃げていってしまうのだった。女官は一度後宮に入れば、生涯を宮外には出ずに過ごすことになる。むろん、ちょっとした外出や里帰りなどはこの例ではない。が、永のお暇を賜ることはできず、生涯を日陰の花で過ごすのだ。
仮に出宮できても、国王の女と見なされる女官は一生、結婚はできない宿命である。通常、明確な理由もなく、ましてや許可なく出宮すれば、それは逃亡と見なされ、見つかれば厳罰に処される。最悪の場合、生命を失うことさえあるのだ。
なのに、臨女官は十年前に逃亡した罪を問われないばかりか、王おん自らの意思で再入宮が決まったという。周囲の羨望や嫉妬混じりの視線が莉彩に集まるのも当然といえば当然ではあった。
とはいえ、ほんの四ヵ月ばかりしか宮仕えの経験のない莉彩は新米同然の身だ。幾ら王の贔屓があるとはいえ、与えられる仕事はやはり洗濯や掃除といった下働きがするような雑務ばかりだった。
莉彩は王と共に王宮に戻った。十年も前に突如として宮殿から姿を消した臨(イム)女官が再び舞い戻ってきた―、このニュースは忽ちにして宮殿内を駆けめぐった。莉彩を再入宮させたのはあくまでも提調尚(チェジヨサン)宮(グン)(後宮女官長)であるということになっていたが、内実は国王その人が連れ帰ったのだという噂が真しやかに語られた。
国王がよもや一介の女官を、しかも十年前に宮殿から逃げるようにいなくなった不届き者を自ら再入宮させたというのは、いかにも外聞をはばかる話だ。それゆえ、王の乳母であった臨尚宮が提調尚宮に頼み込んで再入宮させたという形式を取ったものの、そのような小細工がまかり通るほど後宮は甘い場所ではない。
そのことは、王がそれほどまでに臨女官に執着しているという事実をより強調することにもなった。周囲の視線は莉彩に対して冷たかった。十年前には親友として接してくれていた朋輩女官たちですら、莉彩を見かけると遠巻きにひそひそと囁き交わし、ろくに視線を合わせようともしない。
莉彩が話しかけようとしただけで、若い女官たちは皆、蜘蛛の子を散らすように逃げていってしまうのだった。女官は一度後宮に入れば、生涯を宮外には出ずに過ごすことになる。むろん、ちょっとした外出や里帰りなどはこの例ではない。が、永のお暇を賜ることはできず、生涯を日陰の花で過ごすのだ。
仮に出宮できても、国王の女と見なされる女官は一生、結婚はできない宿命である。通常、明確な理由もなく、ましてや許可なく出宮すれば、それは逃亡と見なされ、見つかれば厳罰に処される。最悪の場合、生命を失うことさえあるのだ。
なのに、臨女官は十年前に逃亡した罪を問われないばかりか、王おん自らの意思で再入宮が決まったという。周囲の羨望や嫉妬混じりの視線が莉彩に集まるのも当然といえば当然ではあった。
とはいえ、ほんの四ヵ月ばかりしか宮仕えの経験のない莉彩は新米同然の身だ。幾ら王の贔屓があるとはいえ、与えられる仕事はやはり洗濯や掃除といった下働きがするような雑務ばかりだった。
