テキストサイズ

約束~リラの花の咲く頃に~ⅢLove is forever

第6章 契り

「そなたは相変わらず面白きおなごだな。では、そなたらしい言葉で良いから、教えてくれ」
「それでは申し上げます」
 莉彩は畏まって一礼すると、ありのままの想いを素直に述べた。
「まず、とても素敵です。格好良い、うーん、それから、ダンディだし、ハンサム。後は、相変わらずお綺麗ですね。女の私よりよっぽど綺麗で、お美しいです」
「だんでぃ? はんさむ?」
 今度は王が当惑した顔になるのに、莉彩はにっこり笑った。
「とにかく、とびきりの良い男という意味です」
「―」
 流石に王が押し黙ったので、莉彩は慌てた。
「申し訳ございません。私ったら、つい殿下にこうしてお逢いできて、嬉しくなってしまって、幾ら何でもあまりに馴れ馴れしいというか失礼なことを申し上げてしまいました」
 狼狽える莉彩を前に、王がフッと笑う。
「良いのだ。莉彩。十年前のそなたはまだ私が王であるということに遠慮して、固くなっていた。だが、今は本音を語り、ありのままのそなたを見せてくれる。私はその方が嬉しい。そなたの言葉を借りれば、十年前のそなたも好きであったが、今のそなたの方がもっと好きだ」
 直截な言葉に、莉彩の頬が紅く染まる。
 そんな莉彩を見て、王が瞳が優しげに細められた。
「そなたは、幾つになった?」
「二十六になりました」
「そうか。十年前はまだ蒼く固い果実、開かぬ蕾のようであったが、見事に花開いた。そなたをこうして目の当たりにすれば、十年という年月は、けして短くはなかったのだと自ずと知れる。私を前に怯えてばかりいた少女が成熟した美しい女になるのだからな―」
 王の言おうとしていることは、莉彩にも判った。
 十年前の夜にも、王がこうしてお忍びで莉彩の部屋を訪ねてきたことがあった。その時、莉彩を抱こうとした王に、莉彩はあらん限りの力で抵抗した。
―私に抱かれる覚悟もないくせに、私の傍にいたいなどと申すな。
 あの夜、王はそう言って部屋を出ていった。
 王がつと手を伸ばし、莉彩の手を取った。大きな手のひらが莉彩のやわらかな手を包み込む。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ