
約束~リラの花の咲く頃に~ⅢLove is forever
第6章 契り
「殿下、私ももう殿下のお側を離れたくはありません。ずっと、殿下のお側にいたい」
莉彩は涙ぐんで王を見上げた。
「たとえ父や母のいる時代に帰れなくなったとしても?」
その問いかけにも、莉彩は躊躇わなかった。
「はい」
王がハッとした表情になり、莉彩を燃えるようなまなざしで見つめた。
その瞳の奥で烈しい恋情の焔が燃え盛っている。激情のままに王は莉彩を強く抱きしめ、再び、狂おしく唇を貪った。
こんなに好きなのに、傍にいたいのに、いつかまた離れなければならないのだろうか。
何故だろう、その時、莉彩は愛する男の腕に抱かれて幸せなはずなのに、涙が止まらなかった。
その翌日の昼下がり。
莉彩は井戸端で洗濯に精を出していた。十年前にやはり洗濯をしていた時、全自動洗濯機を現代から持ってきたらと想像したことがあったけれど、やはり文明の利器になれた身には、すべてが手作業というのは辛いものがある。
一枚、一枚、棍棒のようなもので叩いて汚れを落としてゆくのは骨が折れる仕事だ。それでも、山のように積まれた洗濯物がすべて片付く頃には、何か清々しいような一仕事終えたような気分になっていた。
「―莉彩(イチェ)」
ふいに頭上から懐かしい声が降ってきて、莉彩は顔を上げた。
「臨尚(イムサン)宮さま(グンマーマニィ)」
臨淑妍(イムスクヨ)、現国王徳宗の乳母であり、かつて後宮においても尚宮として重きをなした女性である。
「しばらくでしたね。本当に久しぶりだこと」
淑妍は既に六十近くにはなっているはずだが、その柔和な面立ちは若々しく、十年前と殆ど変わりないように見える。
「私の方こそ、ご無沙汰しておりました」
莉彩が感慨を込めて言うと、淑妍は微笑む。
「私は信じていましたよ。あなたが必ず殿下の御許に戻ってくると」
一体、淑妍が莉彩の事情をどれだけ知っているのか。莉彩自身は彼女に自分がタイムトラベラーであることを語ったことはない。しかし、淑妍はすべてを知っているようであった。
莉彩は涙ぐんで王を見上げた。
「たとえ父や母のいる時代に帰れなくなったとしても?」
その問いかけにも、莉彩は躊躇わなかった。
「はい」
王がハッとした表情になり、莉彩を燃えるようなまなざしで見つめた。
その瞳の奥で烈しい恋情の焔が燃え盛っている。激情のままに王は莉彩を強く抱きしめ、再び、狂おしく唇を貪った。
こんなに好きなのに、傍にいたいのに、いつかまた離れなければならないのだろうか。
何故だろう、その時、莉彩は愛する男の腕に抱かれて幸せなはずなのに、涙が止まらなかった。
その翌日の昼下がり。
莉彩は井戸端で洗濯に精を出していた。十年前にやはり洗濯をしていた時、全自動洗濯機を現代から持ってきたらと想像したことがあったけれど、やはり文明の利器になれた身には、すべてが手作業というのは辛いものがある。
一枚、一枚、棍棒のようなもので叩いて汚れを落としてゆくのは骨が折れる仕事だ。それでも、山のように積まれた洗濯物がすべて片付く頃には、何か清々しいような一仕事終えたような気分になっていた。
「―莉彩(イチェ)」
ふいに頭上から懐かしい声が降ってきて、莉彩は顔を上げた。
「臨尚(イムサン)宮さま(グンマーマニィ)」
臨淑妍(イムスクヨ)、現国王徳宗の乳母であり、かつて後宮においても尚宮として重きをなした女性である。
「しばらくでしたね。本当に久しぶりだこと」
淑妍は既に六十近くにはなっているはずだが、その柔和な面立ちは若々しく、十年前と殆ど変わりないように見える。
「私の方こそ、ご無沙汰しておりました」
莉彩が感慨を込めて言うと、淑妍は微笑む。
「私は信じていましたよ。あなたが必ず殿下の御許に戻ってくると」
一体、淑妍が莉彩の事情をどれだけ知っているのか。莉彩自身は彼女に自分がタイムトラベラーであることを語ったことはない。しかし、淑妍はすべてを知っているようであった。
