
約束~リラの花の咲く頃に~ⅢLove is forever
第6章 契り
「大丈夫、私が必ず何とかするから。あなたはこれから何もなかったような顔で大妃殿に戻るのよ。臨女官をこんな目に遭わせた人たちが何を訊いても、知らないって言うの。良い、判ったわね? もし、あなたがこのことを明日の朝まで誰にも言わなかったら、私、あなたが今回の事件には何の拘わりもないってことを孔尚宮さまに証言してあげる」
「ほ、本当にっ?」
「本当よ、約束する。その代わり、もし誰かに少しでも喋ったら、あなたも臨女官をこんな目に遭わせた首謀者の一人だって言うわ」
「い、臨女官は主上の想い人だっていう、もっ、専らの噂の女なのに。こんなことが主上にし、知れたら、私は殺されるわー」
女官はおいおいとまた泣き出す始末。
花芳は内心、舌打ちしたいのを堪えた。
「あとは少し力を貸してちょうだい。臨女官をさるお方のところまで運ぶの」
体格の良い女官に臨女官を背負わせ、花芳は大殿までひた走った。臨女官を背負った太っちょ娘はそのせいで自分までびしょ濡れで、流石にこれには不満そうだったが、頓着してはいられない。事は一刻を争うのだから。
大殿まで来たときには、あまりに急いだせいで、脚自慢の花芳も息が切れていた。
大殿付きの内官に国王殿下に取り次いで欲しいと話すと、年嵩の内官は三人を見て露骨に眉をしかめた。それにしても、厳格で知られる劉尚宮がこの場にいなかったのは、せめてもの幸いだった。
「国王(チユサン)殿下(チヨナー)、女官の守花芳がお目通りを願っております」
内官が部屋の外から声をかけると、ほどなく〝入れ(トラヘラ)〟と声が返ってきた。
扉が内官たちによって開かれ、その隙に花芳が臨女官をおぶった女官と共にすべり込んだ。
本来なら、花芳のような下級女官が国王の尊顔を拝し奉ることはない。国王も訝しげな表情ではあったが、平素から身分に拘ることなく誰にでも親しげに声をかける人柄で知られている。たとえ一介の下っ端女官でも自ら面会を求めてきたからには、逢ってやろうと思ったのだろう。
これが劉尚宮がいれば、必ず王にお目通りは許されなかっただろうが。
「国王殿下、大変ことになりましてございます」
進言を許され、花芳は咳き込んで言った。
「ほ、本当にっ?」
「本当よ、約束する。その代わり、もし誰かに少しでも喋ったら、あなたも臨女官をこんな目に遭わせた首謀者の一人だって言うわ」
「い、臨女官は主上の想い人だっていう、もっ、専らの噂の女なのに。こんなことが主上にし、知れたら、私は殺されるわー」
女官はおいおいとまた泣き出す始末。
花芳は内心、舌打ちしたいのを堪えた。
「あとは少し力を貸してちょうだい。臨女官をさるお方のところまで運ぶの」
体格の良い女官に臨女官を背負わせ、花芳は大殿までひた走った。臨女官を背負った太っちょ娘はそのせいで自分までびしょ濡れで、流石にこれには不満そうだったが、頓着してはいられない。事は一刻を争うのだから。
大殿まで来たときには、あまりに急いだせいで、脚自慢の花芳も息が切れていた。
大殿付きの内官に国王殿下に取り次いで欲しいと話すと、年嵩の内官は三人を見て露骨に眉をしかめた。それにしても、厳格で知られる劉尚宮がこの場にいなかったのは、せめてもの幸いだった。
「国王(チユサン)殿下(チヨナー)、女官の守花芳がお目通りを願っております」
内官が部屋の外から声をかけると、ほどなく〝入れ(トラヘラ)〟と声が返ってきた。
扉が内官たちによって開かれ、その隙に花芳が臨女官をおぶった女官と共にすべり込んだ。
本来なら、花芳のような下級女官が国王の尊顔を拝し奉ることはない。国王も訝しげな表情ではあったが、平素から身分に拘ることなく誰にでも親しげに声をかける人柄で知られている。たとえ一介の下っ端女官でも自ら面会を求めてきたからには、逢ってやろうと思ったのだろう。
これが劉尚宮がいれば、必ず王にお目通りは許されなかっただろうが。
「国王殿下、大変ことになりましてございます」
進言を許され、花芳は咳き込んで言った。
