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約束~リラの花の咲く頃に~ⅢLove is forever

第6章 契り

 そこまで言われては、崔尚宮も了承しないわけにはゆかなかった。
「それでは、殿下。お願い致しまする」
 崔尚宮は深く一礼すると、静かに扉を閉めた。気遣わしげに背後を振り返った後、小さな吐息をついて、廊下を歩き去ってゆく。
 王はしばらく無言で莉彩を見つめていた。
 枕許には崔尚宮が用意した清潔な着替えが置いてある。
 王は迷うことなく掛け衾(ふすま)を捲り、莉彩の着ているチョゴリの紐を解いた。
 懐からリラの花の簪が出てきて、王は眼を瞠った。二人を結びつけた簪、莉彩をこの時代に導いた不思議な能力(ちから)を秘めた簪―、莉彩にとっては肌身離さず持っているほど大切な品に違いない。
 王はリラの簪をそっと枕辺に置いた。
 チョゴリを脱がせ、白の下着も剥ぎ取ると、その下には胸に幾重にも巻いた布が現れる。その下の豊かな膨らみについ眼がいってしまい、王は狼狽えて眼を背けた。
 だが、そんなことをしているべきではないと自らを抑え、視線を莉彩に戻した。それでも、雪花石膏のように白くなめらかな膚を目の当たりにすると、思わずハッと眼を奪われてしまう。
―私は何をしているのだ。
 意識を失って生死の境を彷徨っている女に欲情するなぞ、どうかしている。
 王は自らを叱咤し、莉彩の胸に巻いた布を解いていった。
「―」
 布の下には、波打つ乳房が隠れていた。純白の膚には傷一つなく、たっぷりとした双つの膨らみの頂には淡い桜色の蕾が可憐に息づいている。
 王は知らずその乳房の先端に触れようと手を伸ばしていた。
 そのときだった。眼を固く閉じたままの莉彩がかすかに身を震わせた。震えは次第に烈しくなり、まるで瘧にでもかかったかのように烈しく震え続ける。
 王が我に返り、慌てて手を引っ込める。
―私は最低の男だな。
 と、自嘲する。莉彩の肢体は豊満で確かに男にとっては魅力的には違いないが、こんなときに意識のない女の身体を弄ぼうなどする自分は獣よりも始末に負えない。
 その間にも、莉彩の震えはますます烈しくなってゆく。

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