
約束~リラの花の咲く頃に~ⅢLove is forever
第7章 対立
孫大監の養女になったことにより、莉彩は望むと望まぬに拘わらず、歴史に拘わってしまった。時々、ふっと、我が身のなしたことの怖ろしさに身の竦む想いがする。
だが、その度に淑妍の言葉を思い浮かべ、新たに胸に刻むのだった。
―歴史や時代なぞ、どうでも良い、そなたには関わりなきことだと割り切りなさい。私が思うに、歴史はあくまでも人が作ってゆくものです。そなたが生きていたはるか未来では、私たちが生きるこの時代がどのように語り継がれているかは知りませんが、そなたがここにいることで未来が変わるというのなら、それが結局は、最終的な歴史のあるべき姿ということです。そんな途方もないことを考えるよりは、そなたは一人の女人として生きてゆくことをお考えなさい。歴史がどうこうだと悩むより、人間として後で自分の過ぎ来し方を後悔しない生き方を選ぶのです。
淑妍のように容易く割り切れるものではないけれど、彼女の言うこともまた道理であった。
そして、莉彩は歴史の傍観者であることよりも、一人の女として生きてゆくことを選んだ。果たして、その選択が良かったのかどうかなんて、今の莉彩には判らない。ただ一つだけ、はっきりと言えるのは、徳宗の傍にいる道を選び取った自分の生き方を後悔はしないということだけだ。
だから、今はそれで良いのではないかと思う。淑妍の言うように、歴史は結局、人の生きた道であり、人自身が作り上げてゆくものだ。莉彩が徳宗の後宮に入ったことで歴史がどのように変わったかは、いずれ明らかになることだろう。もし、莉彩が再び現代に戻るとすれば、の話だが。
不思議なことに、莉彩は自分がいつかはまた二十一世紀に戻るだろうと薄々察していた。いや、本音を言えば、戻りたくない。しかし、幾ら莉彩がどうあがこうと、多分、〝その瞬間(とき)〟は必ず来る。自分と徳宗が何か人知の及ばない摩訶不思議な力で引き寄せられるというのなら、また、その逆に別離も避けることはできないのではないだろうか。
めぐり逢っては別れ、また引き寄せられるようにして出逢い、別れる。恐らくは、それが自分たちの宿命(さだめ)に違いない。あまりに哀しい運命だとは思うけれど、それでも、莉彩は徳宗とめぐり逢えて良かったと思う。最愛の男と出逢わせ、結びつけてくれた不思議な縁(えにし)に心から感謝しているのだ。
だが、その度に淑妍の言葉を思い浮かべ、新たに胸に刻むのだった。
―歴史や時代なぞ、どうでも良い、そなたには関わりなきことだと割り切りなさい。私が思うに、歴史はあくまでも人が作ってゆくものです。そなたが生きていたはるか未来では、私たちが生きるこの時代がどのように語り継がれているかは知りませんが、そなたがここにいることで未来が変わるというのなら、それが結局は、最終的な歴史のあるべき姿ということです。そんな途方もないことを考えるよりは、そなたは一人の女人として生きてゆくことをお考えなさい。歴史がどうこうだと悩むより、人間として後で自分の過ぎ来し方を後悔しない生き方を選ぶのです。
淑妍のように容易く割り切れるものではないけれど、彼女の言うこともまた道理であった。
そして、莉彩は歴史の傍観者であることよりも、一人の女として生きてゆくことを選んだ。果たして、その選択が良かったのかどうかなんて、今の莉彩には判らない。ただ一つだけ、はっきりと言えるのは、徳宗の傍にいる道を選び取った自分の生き方を後悔はしないということだけだ。
だから、今はそれで良いのではないかと思う。淑妍の言うように、歴史は結局、人の生きた道であり、人自身が作り上げてゆくものだ。莉彩が徳宗の後宮に入ったことで歴史がどのように変わったかは、いずれ明らかになることだろう。もし、莉彩が再び現代に戻るとすれば、の話だが。
不思議なことに、莉彩は自分がいつかはまた二十一世紀に戻るだろうと薄々察していた。いや、本音を言えば、戻りたくない。しかし、幾ら莉彩がどうあがこうと、多分、〝その瞬間(とき)〟は必ず来る。自分と徳宗が何か人知の及ばない摩訶不思議な力で引き寄せられるというのなら、また、その逆に別離も避けることはできないのではないだろうか。
めぐり逢っては別れ、また引き寄せられるようにして出逢い、別れる。恐らくは、それが自分たちの宿命(さだめ)に違いない。あまりに哀しい運命だとは思うけれど、それでも、莉彩は徳宗とめぐり逢えて良かったと思う。最愛の男と出逢わせ、結びつけてくれた不思議な縁(えにし)に心から感謝しているのだ。
