
約束~リラの花の咲く頃に~ⅢLove is forever
第7章 対立
―ここへおいで。
そう言われているのが判り、莉彩は頬を染めながらも王の胸にもたれかかり広い胸に頬を寄せた。
「莉彩、予は、いずれ、そなたを中殿として迎えようと思う」
刹那、莉彩は我が耳を疑った。
「殿下(チヨナー)、今、何と仰せになられました?」
愛する男と共にいる幸せに浸っていた莉彩は弾かれたように顔を上げた。
「何度でも言うぞ。予はそなたを王妃に、中殿に直したいと考えている」
「なりませぬ、殿下」
莉彩は懇願するように言った。
「何故? そなたは中殿としての十分な器だと思うが」
「いつかも申し上げましたように、私は殿下のお側にこうしていられるだけで良いのです。他に何も望みはしません。淑容の地位を賜っただけでも畏れ多いのに、この上、中殿など、あまりに分不相応な立場に身が竦みそうになります」
王が破顔した。
「大抵の女なら、予がこう申せば、ここぞとばかりにねだり事をしてくるものだが」
更に含み笑いをしながら付け加えることも忘れない。
「もっとも、予は、そなたのそんな欲のない慎ましやかさが好きなのだ」
莉彩の頬がうっすらと染まる。
「殿下、お願いでございますゆえ、先刻のようなお話は二度となさらないで下さいませ」
なおも訴える莉彩の髪を愛おしげに撫で、王がしきりに首をひねる。
「つくづく欲のないおなごだな」
そう呟く王の横顔は、心なしか憔悴の色がありありと見えた。
既に夜半過ぎ、室内は龍が浮き彫りにされた国王専用の蝋燭が赤々と燃えている。が、王の顔色が悪いのは、その光の加減だけではないようだ。
「殿下、今宵はお顔の色が優れませんが、お疲れなのではございませんか?」
莉彩はずっと気になっていたことを口にした。本当を言うと、今夜だけではない、ここひと月ばかりの間で、王は随分とやつれた。
ひと回り痩せたようで、頬の肉が落ちた。元々美しい男なので、やつれた様もまた凄みの加わった美貌ともいえるのだが、莉彩はやはり王の健康状態が気になった。
そう言われているのが判り、莉彩は頬を染めながらも王の胸にもたれかかり広い胸に頬を寄せた。
「莉彩、予は、いずれ、そなたを中殿として迎えようと思う」
刹那、莉彩は我が耳を疑った。
「殿下(チヨナー)、今、何と仰せになられました?」
愛する男と共にいる幸せに浸っていた莉彩は弾かれたように顔を上げた。
「何度でも言うぞ。予はそなたを王妃に、中殿に直したいと考えている」
「なりませぬ、殿下」
莉彩は懇願するように言った。
「何故? そなたは中殿としての十分な器だと思うが」
「いつかも申し上げましたように、私は殿下のお側にこうしていられるだけで良いのです。他に何も望みはしません。淑容の地位を賜っただけでも畏れ多いのに、この上、中殿など、あまりに分不相応な立場に身が竦みそうになります」
王が破顔した。
「大抵の女なら、予がこう申せば、ここぞとばかりにねだり事をしてくるものだが」
更に含み笑いをしながら付け加えることも忘れない。
「もっとも、予は、そなたのそんな欲のない慎ましやかさが好きなのだ」
莉彩の頬がうっすらと染まる。
「殿下、お願いでございますゆえ、先刻のようなお話は二度となさらないで下さいませ」
なおも訴える莉彩の髪を愛おしげに撫で、王がしきりに首をひねる。
「つくづく欲のないおなごだな」
そう呟く王の横顔は、心なしか憔悴の色がありありと見えた。
既に夜半過ぎ、室内は龍が浮き彫りにされた国王専用の蝋燭が赤々と燃えている。が、王の顔色が悪いのは、その光の加減だけではないようだ。
「殿下、今宵はお顔の色が優れませんが、お疲れなのではございませんか?」
莉彩はずっと気になっていたことを口にした。本当を言うと、今夜だけではない、ここひと月ばかりの間で、王は随分とやつれた。
ひと回り痩せたようで、頬の肉が落ちた。元々美しい男なので、やつれた様もまた凄みの加わった美貌ともいえるのだが、莉彩はやはり王の健康状態が気になった。
