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約束~リラの花の咲く頃に~ⅢLove is forever

第1章 邂逅~めぐりあい~

 勢い込む男に、老人は更に莉彩の顔をじっと見つめる。真正面からだけではなく、あらゆる角度から吟味するように眺めた。その両眼に再び鋭い光が戻っている。
「フム、やはり、そうでございましたか」
 老人は一人で納得したように頷き、今度は男に向き直った。
「観相はあくまでも人相を観るものであり、私は占い師ではございません。時に私が告げたことが、その方のこれからの一生を左右するときもございます。ゆえに、申し訳ございませんが、今、ここでその内容をお教えすることはできかねます」
「人生を左右するほどの重大事なら、尚更、当人に告げるべきではないのか。もし、今後、その身に起こり得ることが予め予見できれば、不幸を回避することができる」
 男が食い下がる。老爺は穏やかな表情で緩やかに首を振った。
「もし明日、自分に不幸が降りかかると知れば、その人は心穏やかに過ごせるでしょうか。旦那さま、私の告げる未来は、恐らくは誰にも―天でさえもが変えることはできぬものです。人には知らなくても良いこともございますゆえのう」
「では、そなたは、この女人に近々、不幸が降りかかると、そう申すのだな」
 念を押すように言う男に、老人は笑った。
「いいえ、私はけして、そのようなことは申してはおりませぬですよ、旦那さま。ただ、そのお嬢さまにとっては知らなくても良いことですから、申し上げる必要はないと言っているだけにございます。ええ、知る必要なぞ、さらさらございませんとも。そちらのお嬢さまにも、旦那さまご自身にも」
 何かこの老人に訊ねなければならないことがあるような気がして、莉彩は口を開いた。
「あの」

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