
約束~リラの花の咲く頃に~ⅢLove is forever
第9章 MooN Light
それでも急に姿を消した莉彩の身を案じて両親は半狂乱になっており、当然のことに警察に捜索願が出ていた。それでなくとも、莉彩はその十年前にも謎の失踪を遂げている。車に轢かれそうになったところを急に姿が見えなくなり、帰還直後は、結構な話題になったほどであった。
莉彩はすべての問いに対して口を閉ざした。両親からも警察からの聴取に対しても、ただ〝話せません〟と頑なに口をつぐんだ。警察としても当人の身柄が無事に戻ってきたのだから、追及のしようがない。両親もあまり責めて、莉彩を追いつめてはいけないとひとたびは質問を止めた。
が、ほどなく莉彩の妊娠が判ってからというもの、大騒動になった。
―一体、相手はどこの男なんだ?
父には問いつめられ、母は予想外のなりゆきに号泣した。
しかし、莉彩は幾ら問いつめられても、これに対しても何も応えなかった。業を煮やした父は莉彩の頬を打った。
―お前は父親の名前も言えないような男の子を妊娠したのか? 出て行け、お前のようなふしだらな娘を持った憶えはない。男のところへなり、どこへなりと行くが良かろう。
―あなたッ、お願いですから、落ち着いて下さい。莉彩がこんなことをするなんて、よほどの事情があったんですよ。今、この娘を追い出したら、また、どうなってしまうか判りません、今度こそ二度と帰ってこなかったら、どうするんですか!?
母は泣きながら父に取り縋ったが、真面目一途な父は娘が未婚の母になることには到底我慢ならなかったらしい。とうとう、莉彩の顔を見ようともしなかった。
莉彩が出てゆく時、父も握り拳を痛いほどきつく握りしめ、男泣きに声を殺して泣いていた。
莉彩は当時、実家を離れ、北海道のアパレル・メーカーに勤務していて、休暇を取って実家のあるY町に帰ってきたときに二度目のタイム・スリップが起こったのである。
実家を出た莉彩はとりあえず北海道に戻り、産休に入るまでは同じ会社に勤務し続けた。そして、妊娠九ヵ月まで働き続け、退社を願い出た後、故郷のY町の隣のI町に移り住んだのだ。そこで小さなアパートを借り、一人で子どもを生んだ。赤ちゃんが生後三ヵ月になるまでは、それまで貯めてきた貯金と退職金をやりくりして凌ぎ、四ヵ月めに入ったのを機に再就職した。
莉彩はすべての問いに対して口を閉ざした。両親からも警察からの聴取に対しても、ただ〝話せません〟と頑なに口をつぐんだ。警察としても当人の身柄が無事に戻ってきたのだから、追及のしようがない。両親もあまり責めて、莉彩を追いつめてはいけないとひとたびは質問を止めた。
が、ほどなく莉彩の妊娠が判ってからというもの、大騒動になった。
―一体、相手はどこの男なんだ?
父には問いつめられ、母は予想外のなりゆきに号泣した。
しかし、莉彩は幾ら問いつめられても、これに対しても何も応えなかった。業を煮やした父は莉彩の頬を打った。
―お前は父親の名前も言えないような男の子を妊娠したのか? 出て行け、お前のようなふしだらな娘を持った憶えはない。男のところへなり、どこへなりと行くが良かろう。
―あなたッ、お願いですから、落ち着いて下さい。莉彩がこんなことをするなんて、よほどの事情があったんですよ。今、この娘を追い出したら、また、どうなってしまうか判りません、今度こそ二度と帰ってこなかったら、どうするんですか!?
母は泣きながら父に取り縋ったが、真面目一途な父は娘が未婚の母になることには到底我慢ならなかったらしい。とうとう、莉彩の顔を見ようともしなかった。
莉彩が出てゆく時、父も握り拳を痛いほどきつく握りしめ、男泣きに声を殺して泣いていた。
莉彩は当時、実家を離れ、北海道のアパレル・メーカーに勤務していて、休暇を取って実家のあるY町に帰ってきたときに二度目のタイム・スリップが起こったのである。
実家を出た莉彩はとりあえず北海道に戻り、産休に入るまでは同じ会社に勤務し続けた。そして、妊娠九ヵ月まで働き続け、退社を願い出た後、故郷のY町の隣のI町に移り住んだのだ。そこで小さなアパートを借り、一人で子どもを生んだ。赤ちゃんが生後三ヵ月になるまでは、それまで貯めてきた貯金と退職金をやりくりして凌ぎ、四ヵ月めに入ったのを機に再就職した。
