
約束~リラの花の咲く頃に~ⅢLove is forever
第10章 New MooN
New MooN
莉彩と聖泰はその身柄をその日の中に宮殿へと移された。むろん、国王自らの厳命によるものであった。
いかなる言い訳も拒むことも一切、許されず、かつての寵妃に対しての王の根深い怒りがそれらをよく物語っていた。
誰もが事の成り行きを固唾を呑んで見守っていた。もう二十年以上も昔になるが、徳宗は自らを裏切ったという罪で当時、熱愛してした妃である伊淑儀に毒杯を賜っている。今度もまた昔の悲劇が再び繰り返されるのかと興味半分、恐怖半分で戦々恐々としていた。もとより、王の妃が良人たる王以外の男と交わって生んだ子など、王が到底生かしておくとは思えなかった。
だが、王はこの度は全く別の処置を取った。
表向きは、徳宗は莉彩―孫淑容に一切の罰を与えなかったのである。人々は、この寛大な計らいをやはり徳宗の孫淑容に対する並々ならぬ執着からと理解した。
―が、事は意外な方向に進んだ。
孫淑容を再び入宮させたその夜から、徳宗は彼女の寝所を毎夜、訪ねるようになった。
四年ぶりに徳宗に抱かれた夜のことである。
夜遅くにやって来た徳宗を、莉彩は頭を垂れて迎えた。既に女官たちの手によって湯浴みを終えた莉彩は純白の夜着に着替えている。
四年ぶりに帰ってきた莉彩を以前、仕えていた守(ス)花房(ファバン)を初め、張(チヤン)春陽(チユンニヤン)らの女官たちは泣いて出迎えた。花房など、莉彩を見た途端、号泣して一時間以上も泣きっ放しだった有様だ。莉彩がどれほど彼女たちに慕われていたか、その人望と人気が判るというものだった。
泣きじゃくる花房を莉彩は優しく抱きしめ、子どもにするように髪を撫でてやった。
その忠実無比な女官たちの手によって丹念に磨き上げられた白い身体には香油が塗り込まれ、かぐわしい香りを放っている。
薔薇の花びらがふんだんに浮かんだ湯舟に身を沈める莉彩のなめらかな膚を女官たちが布で磨き上げてゆくのだが、その間中、莉彩は眼を閉じて、なされるがままに任せていた。
花房だけは、莉彩の固く閉じた眼から涙が零れ落ちていたのに気付いていた―。
王が訪れたのは既に夜半を回っており、ミミズクの声がいつもにもまして侘びしげに夜陰に響き渡り、寂寥感をかきたてた。
莉彩と聖泰はその身柄をその日の中に宮殿へと移された。むろん、国王自らの厳命によるものであった。
いかなる言い訳も拒むことも一切、許されず、かつての寵妃に対しての王の根深い怒りがそれらをよく物語っていた。
誰もが事の成り行きを固唾を呑んで見守っていた。もう二十年以上も昔になるが、徳宗は自らを裏切ったという罪で当時、熱愛してした妃である伊淑儀に毒杯を賜っている。今度もまた昔の悲劇が再び繰り返されるのかと興味半分、恐怖半分で戦々恐々としていた。もとより、王の妃が良人たる王以外の男と交わって生んだ子など、王が到底生かしておくとは思えなかった。
だが、王はこの度は全く別の処置を取った。
表向きは、徳宗は莉彩―孫淑容に一切の罰を与えなかったのである。人々は、この寛大な計らいをやはり徳宗の孫淑容に対する並々ならぬ執着からと理解した。
―が、事は意外な方向に進んだ。
孫淑容を再び入宮させたその夜から、徳宗は彼女の寝所を毎夜、訪ねるようになった。
四年ぶりに徳宗に抱かれた夜のことである。
夜遅くにやって来た徳宗を、莉彩は頭を垂れて迎えた。既に女官たちの手によって湯浴みを終えた莉彩は純白の夜着に着替えている。
四年ぶりに帰ってきた莉彩を以前、仕えていた守(ス)花房(ファバン)を初め、張(チヤン)春陽(チユンニヤン)らの女官たちは泣いて出迎えた。花房など、莉彩を見た途端、号泣して一時間以上も泣きっ放しだった有様だ。莉彩がどれほど彼女たちに慕われていたか、その人望と人気が判るというものだった。
泣きじゃくる花房を莉彩は優しく抱きしめ、子どもにするように髪を撫でてやった。
その忠実無比な女官たちの手によって丹念に磨き上げられた白い身体には香油が塗り込まれ、かぐわしい香りを放っている。
薔薇の花びらがふんだんに浮かんだ湯舟に身を沈める莉彩のなめらかな膚を女官たちが布で磨き上げてゆくのだが、その間中、莉彩は眼を閉じて、なされるがままに任せていた。
花房だけは、莉彩の固く閉じた眼から涙が零れ落ちていたのに気付いていた―。
王が訪れたのは既に夜半を回っており、ミミズクの声がいつもにもまして侘びしげに夜陰に響き渡り、寂寥感をかきたてた。
