
約束~リラの花の咲く頃に~ⅢLove is forever
第10章 New MooN
しかし、蒼褪めるわけでもなく恐怖に震えるわけでもなく(少なくとも、徳宗にはそう見えた)、端座して自分を真正面から見つめてくる女を見ている中に、得体の知れない感情が胸の内で荒れ狂うのを感じていた。
狼狽えもせず、あからさまに怯えを見せるわけでもなく、ひたすら凛然として死を求める女をこの時、心の底から憎いと思ったのだ。
ここまで意地を張り続けるのなら、憐れみなど一切必要ない。こうなったら、暗い情動と妬心に突き動かされるままに、この女を蹂躙し、根こそぎ奪い尽くしてやれば良い。
そして、この身の程知らずな女に対して、自分の良人が誰であるか改めてその身体にとことん刻みつけ思い知らせてやれば良いのだ。
徳宗は何も言わず、莉彩をその場に押し倒した。上から覆い被さったまま、荒々しく夜着の合わせを開く、紐がなかなか解けなかったので、途中からは解こうとせずに引き裂いた。
ビリッと絹の裂ける嫌な音が響き、莉彩はその音が自分の心の悲鳴に思えた。
思わず両手を伸ばして拒もうとした莉彩の手を王が上から押さえつける。
「意地を張りたければ、張るが良い。口を割らせる方法は幾らでもある。そなたが従順になれぬというなら、その身体に直接問おう」
酷薄な表情で淡々と言う王を、莉彩は涙ぐんで見上げた。これほどまでに憎しみを露わにした王を見るのは初めてだった。
よもやこんな日が来ようとは、莉彩も徳宗ですら想像だにしたことはなかった。互いに強く惹かれ合い、求め合い続けた二人の恋の結末がこんなにも哀しいものだったとは。
莉彩の固く閉じた眼から、ひとすじの涙が流れて落ちる。
頑なに口を閉ざす莉彩に対して、徳宗は苛立ちをぶつけるように荒々しく幾度も抱き、深々と刺し貫いた。その夜の王の行為にはおよそ愛情の欠片もなく、ただ烈しい欲情をぶつけるだけだった。愛撫というよりは、レイプと呼べるほど、鬼気迫った表情で憑かれたように莉彩の身体を夜通し責め立て続けた。
翌日、徳宗が莉彩の寝所を出たのは暁方のことだった。王が帰ってから、莉彩は一人、部屋を出て、殿舎の前に降りた。莉彩はこの度も四年前に賜った宮を引き続き与えられている。莉彩の寝所の隣が居間となり、扉を開けて階(きざはし)を降りれば、殿舎の前に出る。そこからは、幾つも並び立つ後宮の殿舎やはるか向こうには国王の住まう大殿(テージヨン)が見渡せた。
狼狽えもせず、あからさまに怯えを見せるわけでもなく、ひたすら凛然として死を求める女をこの時、心の底から憎いと思ったのだ。
ここまで意地を張り続けるのなら、憐れみなど一切必要ない。こうなったら、暗い情動と妬心に突き動かされるままに、この女を蹂躙し、根こそぎ奪い尽くしてやれば良い。
そして、この身の程知らずな女に対して、自分の良人が誰であるか改めてその身体にとことん刻みつけ思い知らせてやれば良いのだ。
徳宗は何も言わず、莉彩をその場に押し倒した。上から覆い被さったまま、荒々しく夜着の合わせを開く、紐がなかなか解けなかったので、途中からは解こうとせずに引き裂いた。
ビリッと絹の裂ける嫌な音が響き、莉彩はその音が自分の心の悲鳴に思えた。
思わず両手を伸ばして拒もうとした莉彩の手を王が上から押さえつける。
「意地を張りたければ、張るが良い。口を割らせる方法は幾らでもある。そなたが従順になれぬというなら、その身体に直接問おう」
酷薄な表情で淡々と言う王を、莉彩は涙ぐんで見上げた。これほどまでに憎しみを露わにした王を見るのは初めてだった。
よもやこんな日が来ようとは、莉彩も徳宗ですら想像だにしたことはなかった。互いに強く惹かれ合い、求め合い続けた二人の恋の結末がこんなにも哀しいものだったとは。
莉彩の固く閉じた眼から、ひとすじの涙が流れて落ちる。
頑なに口を閉ざす莉彩に対して、徳宗は苛立ちをぶつけるように荒々しく幾度も抱き、深々と刺し貫いた。その夜の王の行為にはおよそ愛情の欠片もなく、ただ烈しい欲情をぶつけるだけだった。愛撫というよりは、レイプと呼べるほど、鬼気迫った表情で憑かれたように莉彩の身体を夜通し責め立て続けた。
翌日、徳宗が莉彩の寝所を出たのは暁方のことだった。王が帰ってから、莉彩は一人、部屋を出て、殿舎の前に降りた。莉彩はこの度も四年前に賜った宮を引き続き与えられている。莉彩の寝所の隣が居間となり、扉を開けて階(きざはし)を降りれば、殿舎の前に出る。そこからは、幾つも並び立つ後宮の殿舎やはるか向こうには国王の住まう大殿(テージヨン)が見渡せた。
