
約束~リラの花の咲く頃に~ⅢLove is forever
第10章 New MooN
聖泰は彼なりに納得したようだ。わずか三歳の幼児がこの状況を完全に理解できるかどうかといえば、難しいだろう。いや、第一、莉彩すら最初この時代に飛んだときは、自分の気が違ったのかと思ったのだから。
だが、聖泰は聡明な子である。三歳なりの理解力で今、自分の置かれた立場を理解し、状況を受け容れているようだ。淑妍の言葉どおり、子どもの適応力、順応力は愕くべきものがある。多分、莉彩が心配するより幼い息子はこの時代の暮らしに馴染んでいっている。
「別に泣いてなんかいないから、心配しないで」
莉彩が精一杯の微笑みを浮かべると、聖泰は頬を膨らませたまま、ヌッと顔を近付ける。
「お母さん、嘘ばっかり言ってる」
莉彩は笑って、息子の額と自分の額をコツンとくっつけた。
「嘘じゃないのよ。それよりも、聖泰は何をしてたの?」
「春陽と鬼ごっこしてたんだ。昼からは花房が絵を描いてくれるって約束したんだよ?」
得意気に言う息子に、莉彩は笑って頷く。
「良かったわね。お姉ちゃんたちに一杯遊んで貰えて」
「でも、花房ったら、保育園の麻由美先生よりも怖いんだ。ボクが朝ご飯のおかずを手で掴んで食べたら、凄く怒るんだよ。そんなお行儀悪いことをしちゃいけませんって、こんな顔するんだ、メェって」
聖泰は自分の小さな手で眼を引っ張って、つり上げて見せた。
その表情に、莉彩は思わず笑い声を立てる。
この子のお陰で、沈み込みそうな心がどれほど救われることか。
聖泰のお気に入りの女官は専ら、守花房と金春陽だ。二人ともに自分の仕事で多忙にも拘わらず、聖泰のお守りというか遊び相手をよくしてくれる。聖泰はこの二人の〝お姉ちゃん〟にすっかり懐き慕っていた。
と、扉の向こうから先触れの声が上がった。
「国王殿下のおなりにございます」
ほどなく扉が開き、徳宗が入ってくる。
莉彩は急いで立ち上がり、脇に寄って頭を下げる。徳宗は当然のように部屋を大股で横切り、上座に座った。
莉彩は聖泰を傍に引き寄せ、小声で囁く。
「聖泰、国王殿下です。頭を下げなさい」
だが、聖泰は頭を下げようとせず、上目遣いに徳宗を恨めしそうな眼で見上げた。
だが、聖泰は聡明な子である。三歳なりの理解力で今、自分の置かれた立場を理解し、状況を受け容れているようだ。淑妍の言葉どおり、子どもの適応力、順応力は愕くべきものがある。多分、莉彩が心配するより幼い息子はこの時代の暮らしに馴染んでいっている。
「別に泣いてなんかいないから、心配しないで」
莉彩が精一杯の微笑みを浮かべると、聖泰は頬を膨らませたまま、ヌッと顔を近付ける。
「お母さん、嘘ばっかり言ってる」
莉彩は笑って、息子の額と自分の額をコツンとくっつけた。
「嘘じゃないのよ。それよりも、聖泰は何をしてたの?」
「春陽と鬼ごっこしてたんだ。昼からは花房が絵を描いてくれるって約束したんだよ?」
得意気に言う息子に、莉彩は笑って頷く。
「良かったわね。お姉ちゃんたちに一杯遊んで貰えて」
「でも、花房ったら、保育園の麻由美先生よりも怖いんだ。ボクが朝ご飯のおかずを手で掴んで食べたら、凄く怒るんだよ。そんなお行儀悪いことをしちゃいけませんって、こんな顔するんだ、メェって」
聖泰は自分の小さな手で眼を引っ張って、つり上げて見せた。
その表情に、莉彩は思わず笑い声を立てる。
この子のお陰で、沈み込みそうな心がどれほど救われることか。
聖泰のお気に入りの女官は専ら、守花房と金春陽だ。二人ともに自分の仕事で多忙にも拘わらず、聖泰のお守りというか遊び相手をよくしてくれる。聖泰はこの二人の〝お姉ちゃん〟にすっかり懐き慕っていた。
と、扉の向こうから先触れの声が上がった。
「国王殿下のおなりにございます」
ほどなく扉が開き、徳宗が入ってくる。
莉彩は急いで立ち上がり、脇に寄って頭を下げる。徳宗は当然のように部屋を大股で横切り、上座に座った。
莉彩は聖泰を傍に引き寄せ、小声で囁く。
「聖泰、国王殿下です。頭を下げなさい」
だが、聖泰は頭を下げようとせず、上目遣いに徳宗を恨めしそうな眼で見上げた。
