
約束~リラの花の咲く頃に~ⅢLove is forever
第10章 New MooN
莉彩は咄嗟に身の危険を感じて、後方へと飛びすさった。
「私ったら―、申し訳ございませぬ。ご無礼をお許し下さいませ」
莉彩はその場に手を付いた。
無意識の中にしたことだった。毎夜、閨で徳宗から受けている酷い仕打ちが知らず莉彩を怯えさせ、警戒させているのだろう。
徳宗の穏やかだった面がさっと蒼褪め、強ばる。その整った面に皮肉げな笑みが浮かんだ。
「莉彩はそんなに予が怖いか?」
「いいえ、そのようなことは」
狼狽えて口ごもる莉彩に、徳宗は酷薄な表情で決めつけた。
「予が怖くないなら、何ゆえ、震えておる」
莉彩はハッとした。自分では全く気付かなかったが、身体がわなわなと震えている。
「も、申し訳ございません」
莉彩の大きな瞳には大粒の涙が溢れ、烈しい恐怖が浮かんでいた。
徳宗はそんな莉彩をしばらく無言で見つめていたかと思うと、スと立った。
「大殿に戻る」
ひと言乾いた声で言うと、莉彩の方を振り向こうともせずに部屋を出ていった。
音もなく扉が閉まる。
やはり、国王殿下は自分を許してはいないのだ―、莉彩は改めてその想いに駆られた。
それはそうだろう。徳宗を裏切った莉彩を彼が許すはずがないのだ。怒って帰っていった徳宗は、また今夜も怒りのままに莉彩を抱くに違いない。気に入らぬことがあった日は、徳宗は常以上に容赦なくふるまう。
また今夜も徳宗を寝所に迎え、折檻のような性交の相手をしなければならないのかと考えだけで、莉彩は恥ずかしさと怖ろしさに身体の震えはいっそう烈しくなる。
徳宗が置いていったリラの簪を拾い上げ、莉彩は声を殺して忍び泣いた。
「私ったら―、申し訳ございませぬ。ご無礼をお許し下さいませ」
莉彩はその場に手を付いた。
無意識の中にしたことだった。毎夜、閨で徳宗から受けている酷い仕打ちが知らず莉彩を怯えさせ、警戒させているのだろう。
徳宗の穏やかだった面がさっと蒼褪め、強ばる。その整った面に皮肉げな笑みが浮かんだ。
「莉彩はそんなに予が怖いか?」
「いいえ、そのようなことは」
狼狽えて口ごもる莉彩に、徳宗は酷薄な表情で決めつけた。
「予が怖くないなら、何ゆえ、震えておる」
莉彩はハッとした。自分では全く気付かなかったが、身体がわなわなと震えている。
「も、申し訳ございません」
莉彩の大きな瞳には大粒の涙が溢れ、烈しい恐怖が浮かんでいた。
徳宗はそんな莉彩をしばらく無言で見つめていたかと思うと、スと立った。
「大殿に戻る」
ひと言乾いた声で言うと、莉彩の方を振り向こうともせずに部屋を出ていった。
音もなく扉が閉まる。
やはり、国王殿下は自分を許してはいないのだ―、莉彩は改めてその想いに駆られた。
それはそうだろう。徳宗を裏切った莉彩を彼が許すはずがないのだ。怒って帰っていった徳宗は、また今夜も怒りのままに莉彩を抱くに違いない。気に入らぬことがあった日は、徳宗は常以上に容赦なくふるまう。
また今夜も徳宗を寝所に迎え、折檻のような性交の相手をしなければならないのかと考えだけで、莉彩は恥ずかしさと怖ろしさに身体の震えはいっそう烈しくなる。
徳宗が置いていったリラの簪を拾い上げ、莉彩は声を殺して忍び泣いた。
