
約束~リラの花の咲く頃に~ⅢLove is forever
第10章 New MooN
「殿下、あの子どもは孫淑容さまのお子にございましょう。一度、私が淑容さまに申し上げて参ります。本来なら、科人の淑容さまとその子どもがこうして後宮にいるだけでも畏れ多いのに、淑容さまは我が子の躾もろくになさっておられぬご様子」
劉尚宮がぶつぶつと零していると、徳宗が鋭い声で問うた。
「劉尚宮。科人とは一体、誰のことだ?」
「は、はっ。それは―」
劉尚宮が口ごもると、大殿内官が控えめに言上した。
「殿下、私ごときが殿下と淑容さまのご夫婦仲に口出しできるものではございませぬが、衷心より敢えて申し上げます」
「良い、申してみよ」
「淑容さまのお連れになったお子の出生について朝廷では大臣たちが日毎、かしましく噂し合っております。出宮されていた四年の間に、淑容さまはゆく方知れずとなられ、口にするのもはばかりながら、殿下以外の男と通じたと申す者があります。先ほどのお子は、淑容さまが姦夫と通じて生んだ子どもだと囁かれておりますのに、そのような子をこのまま宮殿にとどめておかれるのはどうかと案じらるのです。それでなくとも、大臣どもは殿下の隙を付こうと日頃から画策しておりますゆえ」
劉尚宮が途中で内官の言葉を引き取った。
「殿下に心より忠誠をもってお仕えする者は皆、そのことを案じておるのでございます。殿下がとかくの噂のある淑容さまとその子どもに罰を与えられることもなく、後宮に引き止めておかれることがいずれ殿下の治世の曇りになるのではないかと」
「どうか、私どもの忠言をお心にお止め下さり、賢明なるご判断をなさって下さいますよう」
内官が深々と頭を垂れた。
「少し一人になって考えたいことがある。そなたらは少し離れていよ」
徳宗が命ずると、内官・尚宮たちは言われたように一定の距離を保って王から離れた。
その時、徳宗はふと地面を見た。
聖泰が無心に書いていたものが地面にはそっくりそのまま残っている。
近づいて眼を凝らして見ると、たどたどしい字で書かれている字が眼に入った。男と女らしい人形の絵がそれぞれ一人ずつ描かれていて、その下に〝お父さん(アボジ) 〟、〝お母さん(オモニ) 〟とハングルで記されていた。
劉尚宮がぶつぶつと零していると、徳宗が鋭い声で問うた。
「劉尚宮。科人とは一体、誰のことだ?」
「は、はっ。それは―」
劉尚宮が口ごもると、大殿内官が控えめに言上した。
「殿下、私ごときが殿下と淑容さまのご夫婦仲に口出しできるものではございませぬが、衷心より敢えて申し上げます」
「良い、申してみよ」
「淑容さまのお連れになったお子の出生について朝廷では大臣たちが日毎、かしましく噂し合っております。出宮されていた四年の間に、淑容さまはゆく方知れずとなられ、口にするのもはばかりながら、殿下以外の男と通じたと申す者があります。先ほどのお子は、淑容さまが姦夫と通じて生んだ子どもだと囁かれておりますのに、そのような子をこのまま宮殿にとどめておかれるのはどうかと案じらるのです。それでなくとも、大臣どもは殿下の隙を付こうと日頃から画策しておりますゆえ」
劉尚宮が途中で内官の言葉を引き取った。
「殿下に心より忠誠をもってお仕えする者は皆、そのことを案じておるのでございます。殿下がとかくの噂のある淑容さまとその子どもに罰を与えられることもなく、後宮に引き止めておかれることがいずれ殿下の治世の曇りになるのではないかと」
「どうか、私どもの忠言をお心にお止め下さり、賢明なるご判断をなさって下さいますよう」
内官が深々と頭を垂れた。
「少し一人になって考えたいことがある。そなたらは少し離れていよ」
徳宗が命ずると、内官・尚宮たちは言われたように一定の距離を保って王から離れた。
その時、徳宗はふと地面を見た。
聖泰が無心に書いていたものが地面にはそっくりそのまま残っている。
近づいて眼を凝らして見ると、たどたどしい字で書かれている字が眼に入った。男と女らしい人形の絵がそれぞれ一人ずつ描かれていて、その下に〝お父さん(アボジ) 〟、〝お母さん(オモニ) 〟とハングルで記されていた。
