
約束~リラの花の咲く頃に~ⅢLove is forever
第11章 Half MooN
父親として小さなあの子に何をしてやったのか。あれほどまでに顔も知らぬ父親に焦がれていた幼子に、どのような仕打ちをしたのか。
徳宗は莉彩にあの子を〝姦夫の子〟とまではっきりと言った。
私は何と愚かな了見の狭い男だったんだ!!
王の思考は目まぐるしく回転する。莉彩の子聖泰は今は五歳になっているはずだ。だとすれば、莉彩が聖泰を身籠もったのは六年前という計算になり、丁度その頃、莉彩と徳宗は十年の時を経て漸く結ばれたのではないか!
その頃、体調を崩していたこと―ひどい吐き気で薄い粥さえもろくに喉を通らなかったことを思い出す。莉彩は尚薬の診察を頑なに拒んでいたが、今から思えば、あれは懐妊を知られたくないためだったのだろう。すべてを考え合わせれば、六年前、莉彩が現代に戻る直前、懐妊していたのは明白だ。
だが、何故、莉彩は懐妊を徳宗にまでひた隠しにしていたのだろう。更に、四年ぶりに今回、この時代へ現れた際にも聖泰が徳宗の子ではないと言い切ったのか。
莉彩がそのような嘘さえつかなければ、徳宗は莉彩をああまで手酷く扱うこともなく、聖泰に対しても父親として接することができたはずだ。
―莉彩!!
徳宗は心の中で最愛の女の名を呼び、躊躇うことなく部屋を飛び出した。
莉彩は幾度か咳をすると、もそもそと布団の中で身体を動かした。夏風邪を引いてしまったのか、どうも熱っぽくて、いけない。高熱というわけではないのだが、ここ数日、もう微熱が続いて身体がだるい状態が続いている。
幸いにも一人息子がよく働いてくれるので、莉彩は随分と助かっている。小さな身体でくるくるとよく動く。身体を動かすことが好きなのは莉彩に似ているのかもしれない。他人を思いやることのできる優しさは、あの男(ひと)譲りなのだろうか―。
そこまで考えて、莉彩はハッとした。
いけない、また、あの男のことを考えている。都から遠く離れたこの小さな村に来て、はや二年が流れた。あの時、三歳だった聖泰は五歳になった。
徳宗は莉彩にあの子を〝姦夫の子〟とまではっきりと言った。
私は何と愚かな了見の狭い男だったんだ!!
王の思考は目まぐるしく回転する。莉彩の子聖泰は今は五歳になっているはずだ。だとすれば、莉彩が聖泰を身籠もったのは六年前という計算になり、丁度その頃、莉彩と徳宗は十年の時を経て漸く結ばれたのではないか!
その頃、体調を崩していたこと―ひどい吐き気で薄い粥さえもろくに喉を通らなかったことを思い出す。莉彩は尚薬の診察を頑なに拒んでいたが、今から思えば、あれは懐妊を知られたくないためだったのだろう。すべてを考え合わせれば、六年前、莉彩が現代に戻る直前、懐妊していたのは明白だ。
だが、何故、莉彩は懐妊を徳宗にまでひた隠しにしていたのだろう。更に、四年ぶりに今回、この時代へ現れた際にも聖泰が徳宗の子ではないと言い切ったのか。
莉彩がそのような嘘さえつかなければ、徳宗は莉彩をああまで手酷く扱うこともなく、聖泰に対しても父親として接することができたはずだ。
―莉彩!!
徳宗は心の中で最愛の女の名を呼び、躊躇うことなく部屋を飛び出した。
莉彩は幾度か咳をすると、もそもそと布団の中で身体を動かした。夏風邪を引いてしまったのか、どうも熱っぽくて、いけない。高熱というわけではないのだが、ここ数日、もう微熱が続いて身体がだるい状態が続いている。
幸いにも一人息子がよく働いてくれるので、莉彩は随分と助かっている。小さな身体でくるくるとよく動く。身体を動かすことが好きなのは莉彩に似ているのかもしれない。他人を思いやることのできる優しさは、あの男(ひと)譲りなのだろうか―。
そこまで考えて、莉彩はハッとした。
いけない、また、あの男のことを考えている。都から遠く離れたこの小さな村に来て、はや二年が流れた。あの時、三歳だった聖泰は五歳になった。
