
約束~リラの花の咲く頃に~ⅢLove is forever
第11章 Half MooN
聖泰は少し考え、思慮深げな瞳で徳宗を見つめた。
「お金や財宝を持っている人が自分だけ貯め込んでいないで、自分の宝を貧しい人に分け与えてあげれば良いんだよ」
「そうだ、もし、そなたが国王なら、貧しい人たちに自分の宝を分け与えてあげるか?」
父の問いに、聖泰はにっこりとした。
「うん、貧しい人たちに自分のお金を分けてあげる。お父さん、ボクはうんと勉強して賢くなって、大きくなったら、国王さまにお仕えする大臣になりたい。そうして、貧しいからって売られてゆく子どもが一人もいなくなるような、そんな世の中を作りたいよ」
聖泰は嬉しげに言うと、ぴょんぴょん跳ねながら、外へ出ていった。久しぶりに見る聖泰の明るい笑顔に、莉彩も思わず微笑む。
徳宗は粗末な野良着を身に纏い、椅子に座って何かの想いに耽っているようだ。
「あの子が世子(セジヤ)でいずれ王位に就けば、間違いなく聖君と呼ばれる王になるだろう。わずか五歳であれだけのことを考えるというのは、並の子どもではない。あの子のことを考えれば、私の取った道は良かったのかどうかは判らぬな」
「旦那(ダ)さま(リー)、聖泰の名前は、あなたさまから頂いたものなのです」
莉彩の言葉に、徳宗は眼を見開く。
「私からあの子の名前を? それは面白い。初めて聞く話だな」
興味を誘われたように身を乗り出してくるる。莉彩は微笑んだ。
「聖泰の〝聖〟は〝聖君〟から、泰は〝泰平〟から取りました。万世に光り輝く聖君を父上に持ち、また、そのお父上の治世が未来永劫、平かであることを願いました」
「なるほど、そのような意味があったのだな」
徳宗は感じ入ったように頷く。その表情が心なしか、淋しげに見えたのは莉彩の気のせいだったろうか。
更にそれからひと月。
不幸な予測は当たり、村は収穫の時期を迎えたものの、収穫高は例年の半分にも満たなかった。村では更に三人の若い娘たちが売られていった。
十月もそろそろ終わりに近づいたその日、
聖泰はいつもの遊び友達数人と共に裏山で遊んでいた。山というほどの高さではないのに、何故か村人たちから〝裏山〟と呼ばれている場所だ。
「お金や財宝を持っている人が自分だけ貯め込んでいないで、自分の宝を貧しい人に分け与えてあげれば良いんだよ」
「そうだ、もし、そなたが国王なら、貧しい人たちに自分の宝を分け与えてあげるか?」
父の問いに、聖泰はにっこりとした。
「うん、貧しい人たちに自分のお金を分けてあげる。お父さん、ボクはうんと勉強して賢くなって、大きくなったら、国王さまにお仕えする大臣になりたい。そうして、貧しいからって売られてゆく子どもが一人もいなくなるような、そんな世の中を作りたいよ」
聖泰は嬉しげに言うと、ぴょんぴょん跳ねながら、外へ出ていった。久しぶりに見る聖泰の明るい笑顔に、莉彩も思わず微笑む。
徳宗は粗末な野良着を身に纏い、椅子に座って何かの想いに耽っているようだ。
「あの子が世子(セジヤ)でいずれ王位に就けば、間違いなく聖君と呼ばれる王になるだろう。わずか五歳であれだけのことを考えるというのは、並の子どもではない。あの子のことを考えれば、私の取った道は良かったのかどうかは判らぬな」
「旦那(ダ)さま(リー)、聖泰の名前は、あなたさまから頂いたものなのです」
莉彩の言葉に、徳宗は眼を見開く。
「私からあの子の名前を? それは面白い。初めて聞く話だな」
興味を誘われたように身を乗り出してくるる。莉彩は微笑んだ。
「聖泰の〝聖〟は〝聖君〟から、泰は〝泰平〟から取りました。万世に光り輝く聖君を父上に持ち、また、そのお父上の治世が未来永劫、平かであることを願いました」
「なるほど、そのような意味があったのだな」
徳宗は感じ入ったように頷く。その表情が心なしか、淋しげに見えたのは莉彩の気のせいだったろうか。
更にそれからひと月。
不幸な予測は当たり、村は収穫の時期を迎えたものの、収穫高は例年の半分にも満たなかった。村では更に三人の若い娘たちが売られていった。
十月もそろそろ終わりに近づいたその日、
聖泰はいつもの遊び友達数人と共に裏山で遊んでいた。山というほどの高さではないのに、何故か村人たちから〝裏山〟と呼ばれている場所だ。
