
約束~リラの花の咲く頃に~ⅢLove is forever
第11章 Half MooN
聖泰は樹上りが得意である。母の莉彩からは絶対に上ってはいけないと戒められているのだが、これが面白くて止められない。
今日もいちばん上までするすると器用に上り、頑丈そうな太い枝に陣取って、はるか下を眺めている。
「聖泰ちゃんー」
母が懇意にしている趙家の娘尚花が下から手を振っている。
「待ってろよ、一杯美味しそうなのを取ってやるから」
秋たけなわで、樹齢も結構いっていそうな樹には、よく熟れた甘そうな柿が幾つもついている。
この実をたくさん取って帰って、お父さんやお母さんに食べさせてあげたい。
聖泰はそう思った。
聖泰は父のことが大好きだった。何か理由(わけ)があってずっと一緒に暮らせなかったらしい父と共に暮らし始めて五ヵ月、父はよく聖泰と遊んでくれる。父の肩に乗ってぐるぐると回るのは、特に聖泰の好きなことの一つだ。
背の高い父に肩車して貰うと、自分までもが巨人になったように高みから周囲を眺めることができる。
庭で一緒に土を耕したり、実った野菜を取ったり、そんな些細なことが嬉しくて愉しくてならない。
父とは前に一度、逢ったことがあるよう気もするのだけれど、母がこれまで逢ったことはないというのだから、聖泰の気のせいだろう。
最初はほんの少しだけ父と接するのがぎこちなかった。父が嫌いだったのではなく、恥ずかしさや照れからくるものだった。ずっとお父さんには逢いたいと思っていたし、どんな人なんだろうと想像していたら、聖泰が考えていたとおりの優しくて頼もしい男だった。
お父さんは何でも知っているし、難しいことでも聖泰に判りやすく話してくれる。聖泰は父をただ好きなだけではなく、尊敬もしていた。大人になったら、父のように立派な男らしい男になりたいと憧れている。
いかにも美味そうな柿を見せたら、父はどんな顔をするだろうか。いつものように眼を細めて聖泰を見つめ、頭を撫でてくれるだろうか。
聖泰は父の歓ぶ顔を思い描きながら、立ち上がり、背伸びをして一杯に右手を伸ばした。
すぐ近くに、いっとう甘くて美味しそうな実がある。
今日もいちばん上までするすると器用に上り、頑丈そうな太い枝に陣取って、はるか下を眺めている。
「聖泰ちゃんー」
母が懇意にしている趙家の娘尚花が下から手を振っている。
「待ってろよ、一杯美味しそうなのを取ってやるから」
秋たけなわで、樹齢も結構いっていそうな樹には、よく熟れた甘そうな柿が幾つもついている。
この実をたくさん取って帰って、お父さんやお母さんに食べさせてあげたい。
聖泰はそう思った。
聖泰は父のことが大好きだった。何か理由(わけ)があってずっと一緒に暮らせなかったらしい父と共に暮らし始めて五ヵ月、父はよく聖泰と遊んでくれる。父の肩に乗ってぐるぐると回るのは、特に聖泰の好きなことの一つだ。
背の高い父に肩車して貰うと、自分までもが巨人になったように高みから周囲を眺めることができる。
庭で一緒に土を耕したり、実った野菜を取ったり、そんな些細なことが嬉しくて愉しくてならない。
父とは前に一度、逢ったことがあるよう気もするのだけれど、母がこれまで逢ったことはないというのだから、聖泰の気のせいだろう。
最初はほんの少しだけ父と接するのがぎこちなかった。父が嫌いだったのではなく、恥ずかしさや照れからくるものだった。ずっとお父さんには逢いたいと思っていたし、どんな人なんだろうと想像していたら、聖泰が考えていたとおりの優しくて頼もしい男だった。
お父さんは何でも知っているし、難しいことでも聖泰に判りやすく話してくれる。聖泰は父をただ好きなだけではなく、尊敬もしていた。大人になったら、父のように立派な男らしい男になりたいと憧れている。
いかにも美味そうな柿を見せたら、父はどんな顔をするだろうか。いつものように眼を細めて聖泰を見つめ、頭を撫でてくれるだろうか。
聖泰は父の歓ぶ顔を思い描きながら、立ち上がり、背伸びをして一杯に右手を伸ばした。
すぐ近くに、いっとう甘くて美味しそうな実がある。
