テキストサイズ

約束~リラの花の咲く頃に~ⅢLove is forever

第11章 Half MooN

 あれをお父さんに食べさせてあげるんだ。
 聖泰の気は逸った。
 その時、ふとした拍子に脚が滑り、身体が揺れた。慌てて傍の幹を掴んだので事無きを得て、ホッとする。流石にドキリとして冷や汗が流れた。
 と、そのせいか、懐にしまっている玉牌が落ちそうになっているのに気付く。
 これは大切なものだから、絶対に無くしてはいけないと母から言い聞かされていた。もしうっかりと落としてしまったりしたら、大変だ。
 聖泰が玉牌を懐に押し込もうとしたその刹那、誤ってかえって玉牌を掴み損ねてしまった。玉牌がつるりと手から滑る。
「ああっ」
 聖泰は小さな声を上げた。慌てて手を伸ばして受け止めようとして、小さな身体が大きく揺れる。
 落ちてゆく玉牌の後を追うように、聖泰の身体も真っすぐに樹から落下していった。

 村長の屋敷から帰ってくる途中、莉彩は向こうから息せき切ってくる子どもに出逢った。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ