
約束~リラの花の咲く頃に~ⅢLove is forever
第11章 Half MooN
聖泰の弔いは村人総出で行った。小さな骸を棺に入れる時、莉彩は最後まで号泣して骸に取り縋って離れなかった。
何とか埋葬し、弔いを終えた時、莉彩は既に、涙という涙を流し尽くしてしまっていた。
「莉彩」
徳宗も莉彩も白い喪服に身を包んでいる。
喪服姿の莉彩は放心したように居間の片隅に座っていた。
そっと名を呼ばれ、莉彩はゆるゆると振り向く。身体中の水分を出してしまったようだが、それでも聖泰のことを思い出しただけでまた新たな涙が湧いてくるのが我ながら不思議だ。
「大丈夫か? 聖泰が事故に遭った日から、そなたは一睡もしていない。少し横になって休んだらどうだ」
徳宗の労りに満ちた言葉にも、莉彩は何の反応も示さない。
静かすぎる夜の闇が室内に重く垂れ込めていた。
「国王(チユサン)殿下(チヨナー)」
莉彩がこう呼ぶのは、随分と久しぶりのことだ。徳宗が眼を見開くと、莉彩が震える声で言った。
「あの子が一体、何をしたというのでしょうか? ただこの国の王の子として生まれたというだけで、あの玉牌のせいで、あの子は生命を落としてしまったのです。あの玉牌さえなければ、あの子は死ななかったかもしれないのに」
莉彩が両手で頭を抱えた。
「私はやはり呪われているんだわ! こんな―暮らしていた現代から大昔に飛ばされて、たった一人の息子まで奪われてしまった! あなたと出逢わなければ、あの子は死ぬことはなかった。いいえ! あなたと出逢うことさえなかったら、あの子が生まれてくることもなかったのよ。私、私―、あの子がいなくなったこの時代でどうしたら良いの? そうだわ、大妃さまがあの子を殺したよ、私のことも憎んでいるから、あの玉牌をあの子に渡して―」
「莉彩、落ち着きなさい。莉彩!」
徳宗が泣き叫ぶ莉彩を抱きしめた。
「母上(オバママ)を恨んではならぬ。母上に今更、聖泰をどうこうしようなぞというお気持ちがあるはずもない。母上はあの子が世子となるべき王子だと知りながら、あの子の身柄をそなた託したのだ。せめて、そなたの気が変わった時、あの子がその出生に疑いを持たれぬようにと王子であることを証明する玉牌を持たせたのであろう」
何とか埋葬し、弔いを終えた時、莉彩は既に、涙という涙を流し尽くしてしまっていた。
「莉彩」
徳宗も莉彩も白い喪服に身を包んでいる。
喪服姿の莉彩は放心したように居間の片隅に座っていた。
そっと名を呼ばれ、莉彩はゆるゆると振り向く。身体中の水分を出してしまったようだが、それでも聖泰のことを思い出しただけでまた新たな涙が湧いてくるのが我ながら不思議だ。
「大丈夫か? 聖泰が事故に遭った日から、そなたは一睡もしていない。少し横になって休んだらどうだ」
徳宗の労りに満ちた言葉にも、莉彩は何の反応も示さない。
静かすぎる夜の闇が室内に重く垂れ込めていた。
「国王(チユサン)殿下(チヨナー)」
莉彩がこう呼ぶのは、随分と久しぶりのことだ。徳宗が眼を見開くと、莉彩が震える声で言った。
「あの子が一体、何をしたというのでしょうか? ただこの国の王の子として生まれたというだけで、あの玉牌のせいで、あの子は生命を落としてしまったのです。あの玉牌さえなければ、あの子は死ななかったかもしれないのに」
莉彩が両手で頭を抱えた。
「私はやはり呪われているんだわ! こんな―暮らしていた現代から大昔に飛ばされて、たった一人の息子まで奪われてしまった! あなたと出逢わなければ、あの子は死ぬことはなかった。いいえ! あなたと出逢うことさえなかったら、あの子が生まれてくることもなかったのよ。私、私―、あの子がいなくなったこの時代でどうしたら良いの? そうだわ、大妃さまがあの子を殺したよ、私のことも憎んでいるから、あの玉牌をあの子に渡して―」
「莉彩、落ち着きなさい。莉彩!」
徳宗が泣き叫ぶ莉彩を抱きしめた。
「母上(オバママ)を恨んではならぬ。母上に今更、聖泰をどうこうしようなぞというお気持ちがあるはずもない。母上はあの子が世子となるべき王子だと知りながら、あの子の身柄をそなた託したのだ。せめて、そなたの気が変わった時、あの子がその出生に疑いを持たれぬようにと王子であることを証明する玉牌を持たせたのであろう」
