
約束~リラの花の咲く頃に~ⅢLove is forever
第11章 Half MooN
「今日、私は大妃さまのご命令によって、ここに参りました。恐らく、大妃さまご自身も私と全く同じお気持ちかと存じます。殿下、殿下はご幼少の砌からその英明さをつとに知られ、誰もが殿下の御世が一日も早く来ることを願っておりました。殿下はまさに王になるべくして生まれられたお方にございます。生まれながらにして王の器をお持ちになり、王たるために生まれたお方が、聖君として民から慕われた殿下が民をお見捨てになるのですか? また、国王殿下は国の父ともいわれます。父が子たる民を見捨てるのですか?」
「淑妍、いかにそなたいえども、言葉が過ぎるぞ」
王の整った貌が強ばっている。
が、淑妍は首を振った。
「どうせ死ぬさだめならば、申し上げるべきことはすべて申し上げまする。殿下、私は殿下をそのような無責任な王としての務めも果たせぬようなお方にお育てした憶えはございませぬ。どうか殿下、民の待つ都へとお戻り下さい。この淑妍の生命と引き替えに、眼をお覚まし下さい」
淑妍の眼から涙がしたたり落ちる。
「淑妍さま」
莉彩が見ていられず思わず声をかけると、淑妍が莉彩を見た。
「淑容さまにも是非とも申し上げたいことがございます。こうして、殿下と淑容さまを拝見しておりますと、百年も連れ添った夫婦に見えます。恐らく宮殿で過ごされるよりも密度の濃い時間をこの村で過ごされたことでしょう。ですが、淑容さま、甘えは許されませぬ。あなたさまが恋い慕われるお方はこの国の王なのです。あなたさまは国王のただ一人の妻なのですよ。あなたさまがこの方を心からお慕いし、生涯お側にいたいと望まれるのならば、潔く未練はお捨て下さい。今度こそ現代と訣別して頂きたいのです」
「止めよ、淑妍」
徳宗が声を荒げた。
「莉彩はそれでなくとも愛盛りの息子を失ったばかなりのだ。これ以上、莉彩を追いつめないでやってくれぬか」
「殿下、先刻、私が淑容さまに申し上げた言葉の意味をもう一度、よくお考え下さいませ。いかなる甘えも許されはしないのです。国の父とは、母とは、一人の人間である前に王であり王妃なのです。そして、淑容さまが殿下への想いを貫かれるためには、この時代に生きるお覚悟をなさるより他にすべはございませぬ」
「淑妍、いかにそなたいえども、言葉が過ぎるぞ」
王の整った貌が強ばっている。
が、淑妍は首を振った。
「どうせ死ぬさだめならば、申し上げるべきことはすべて申し上げまする。殿下、私は殿下をそのような無責任な王としての務めも果たせぬようなお方にお育てした憶えはございませぬ。どうか殿下、民の待つ都へとお戻り下さい。この淑妍の生命と引き替えに、眼をお覚まし下さい」
淑妍の眼から涙がしたたり落ちる。
「淑妍さま」
莉彩が見ていられず思わず声をかけると、淑妍が莉彩を見た。
「淑容さまにも是非とも申し上げたいことがございます。こうして、殿下と淑容さまを拝見しておりますと、百年も連れ添った夫婦に見えます。恐らく宮殿で過ごされるよりも密度の濃い時間をこの村で過ごされたことでしょう。ですが、淑容さま、甘えは許されませぬ。あなたさまが恋い慕われるお方はこの国の王なのです。あなたさまは国王のただ一人の妻なのですよ。あなたさまがこの方を心からお慕いし、生涯お側にいたいと望まれるのならば、潔く未練はお捨て下さい。今度こそ現代と訣別して頂きたいのです」
「止めよ、淑妍」
徳宗が声を荒げた。
「莉彩はそれでなくとも愛盛りの息子を失ったばかなりのだ。これ以上、莉彩を追いつめないでやってくれぬか」
「殿下、先刻、私が淑容さまに申し上げた言葉の意味をもう一度、よくお考え下さいませ。いかなる甘えも許されはしないのです。国の父とは、母とは、一人の人間である前に王であり王妃なのです。そして、淑容さまが殿下への想いを貫かれるためには、この時代に生きるお覚悟をなさるより他にすべはございませぬ」
