
約束~リラの花の咲く頃に~ⅢLove is forever
第11章 Half MooN
「都に戻ったら、人を遣わして聖泰の骨を分骨する。都の王族の墓所に埋葬し直そう」
徳宗がポツリと呟く。
―大好きだった友達のいるこの村からも離れたくはなかろう。
徳宗の声が吐息と嗚咽に混じった。
だが、親としては、一国の王子をこのまま都からも離れた辺鄙な場所に葬ったままというのは、あまりに不憫なのだ。正式な王子として王族の陵墓に埋葬したいというのが親心というものだろう。
莉彩は腕に抱えた菊の花を小さな墓石に供えた。村の子どもたち―聖泰が毎日、一緒に遊んでいた子らが野辺に咲く花を一生懸命摘んでくれたものだ。
それから、趙尚花が菊で編んでくれた花冠を石の上に載せた。可憐な花の冠は、わずか五歳で逝った王子の頭上に頂く冠にはふさわしい。
最後に、莉彩は懐から翡翠の玉牌を取り出し、そっと墓石に乗せた。
「聖泰の形見として、玉牌はそなたが持っていた方が良いのではないか?」
王が問うと、莉彩は淡く微笑んだ。
「この玉牌は聖泰のものにございますもの。取り落として慌てて拾おうとするほど大切なものだったのです。やはり、これは、聖泰がずっと持っておくのが良いと思うのです」
「そうか」
徳宗は納得したように頷いた。
聖泰の生まれた日のこと、初めて笑った日、歩いた日、一つ一つの想い出がキラキラした宝物のように輝いている。
長引く陣痛で二日もかけて生まれた時、あまりの愛おしさに胸が熱くなった。誰も傍についていてくれる人がいなくて、電話したら急いで駆けつけてくれた親友の泰恵にだけ見守られて臨んだ初めての出産。
ごめんね。何もしてあげられなかったお母さんを許してね。
でも、たとえ、どこにいても、お母さんは聖泰の傍にいるよ。聖泰もお母さんの心の中で生きているよね。
だから哀しまない。
瞼に、あの子の笑顔が甦る。
莉彩は心の中でそっと最愛の我が子に別離を告げた。
徳宗がポツリと呟く。
―大好きだった友達のいるこの村からも離れたくはなかろう。
徳宗の声が吐息と嗚咽に混じった。
だが、親としては、一国の王子をこのまま都からも離れた辺鄙な場所に葬ったままというのは、あまりに不憫なのだ。正式な王子として王族の陵墓に埋葬したいというのが親心というものだろう。
莉彩は腕に抱えた菊の花を小さな墓石に供えた。村の子どもたち―聖泰が毎日、一緒に遊んでいた子らが野辺に咲く花を一生懸命摘んでくれたものだ。
それから、趙尚花が菊で編んでくれた花冠を石の上に載せた。可憐な花の冠は、わずか五歳で逝った王子の頭上に頂く冠にはふさわしい。
最後に、莉彩は懐から翡翠の玉牌を取り出し、そっと墓石に乗せた。
「聖泰の形見として、玉牌はそなたが持っていた方が良いのではないか?」
王が問うと、莉彩は淡く微笑んだ。
「この玉牌は聖泰のものにございますもの。取り落として慌てて拾おうとするほど大切なものだったのです。やはり、これは、聖泰がずっと持っておくのが良いと思うのです」
「そうか」
徳宗は納得したように頷いた。
聖泰の生まれた日のこと、初めて笑った日、歩いた日、一つ一つの想い出がキラキラした宝物のように輝いている。
長引く陣痛で二日もかけて生まれた時、あまりの愛おしさに胸が熱くなった。誰も傍についていてくれる人がいなくて、電話したら急いで駆けつけてくれた親友の泰恵にだけ見守られて臨んだ初めての出産。
ごめんね。何もしてあげられなかったお母さんを許してね。
でも、たとえ、どこにいても、お母さんは聖泰の傍にいるよ。聖泰もお母さんの心の中で生きているよね。
だから哀しまない。
瞼に、あの子の笑顔が甦る。
莉彩は心の中でそっと最愛の我が子に別離を告げた。
