
約束~リラの花の咲く頃に~ⅢLove is forever
第2章 一人だけの結婚式
韓国の伝統である花嫁衣装を身につけ、飾り立てた祭壇に向かい、恭しく拝礼し、日本で言う三三九度―夫婦固めの杯を口にする。
拝礼は両手を上に向けて重ね合わせ、まずは眼の高さまで持ち上げ、座って一礼する最高礼である。重たい婚礼衣裳に身を包んでいるため、一人で所作が上手くできない。ゆえに、両脇から介添えの女官に支えられ、何度かの拝礼を終えるのだ。
婚礼とは、本来めでたいものなのに、まるで通夜のようなこの暗い沈んだ雰囲気はどうだろう。それはやはり、この儀式を終えた女官は正式に王の所有物と見なされ、生涯誰にも嫁ぐことなく、あたら花の盛りを無為に咲く徒花となることを義務づけられるからに違いない。
この日を境に、嘉礼を済ませた女官は一人前として認められ、誰にも愛でられることなく、ひっそりと咲いて散る花となる宿命を背負うことになる。
この時代からはるか後の現代に生きる莉彩にとっては、全くナンセンスな話だと思うが、昔はそれがごく当たり前の考えであったのだろう。現に、日本の江戸時代においても江戸城大奥に奉公する奥女中は上から下まで将軍一人に操を立て、大奥にいる限りは生涯〝お清〟を通すという掟があった。
国は違えども、どこも封建社会の仕組みは似たようなものなのかもしれない。
この時代に飛ばされてきて、莉彩は色々なことを見、知った。二十一世紀の日本に生きる自分は、とても幸せなのだと改めて思った。
同時に、過去と現在の違いを知るにつけ、色んなことを考えるようになった。両班と呼ばれる貴族や王、王族たちというごく一部の特権階級に属する人々だけが絹を纏い、食べきれないような量のご馳走を口にする。
裏腹に庶民は幾ら働いても、その日のお米さえ満足に手に出来ない。ごく少数の上層階級だけが享楽と利を貪る世の中は、どこか間違っている。でも、莉彩には、世の中を動かしたり変えたりする力はない。この時代よりはるか後の時代に生きる、ただの無力な高校生にすぎない。それが何とも口惜しくはあったけれど、二十一世紀に帰ったら、莉彩はもっと一生懸命勉強しようと思った。
大学に進んで、福祉の勉強をして将来は介護関係の仕事につきたいと思うようになったのだ。これまで目標や夢もなく、ただ何となく学校に行って、何となく勉強したり遊んだりしていた自分が凄く恥ずかしかった。
拝礼は両手を上に向けて重ね合わせ、まずは眼の高さまで持ち上げ、座って一礼する最高礼である。重たい婚礼衣裳に身を包んでいるため、一人で所作が上手くできない。ゆえに、両脇から介添えの女官に支えられ、何度かの拝礼を終えるのだ。
婚礼とは、本来めでたいものなのに、まるで通夜のようなこの暗い沈んだ雰囲気はどうだろう。それはやはり、この儀式を終えた女官は正式に王の所有物と見なされ、生涯誰にも嫁ぐことなく、あたら花の盛りを無為に咲く徒花となることを義務づけられるからに違いない。
この日を境に、嘉礼を済ませた女官は一人前として認められ、誰にも愛でられることなく、ひっそりと咲いて散る花となる宿命を背負うことになる。
この時代からはるか後の現代に生きる莉彩にとっては、全くナンセンスな話だと思うが、昔はそれがごく当たり前の考えであったのだろう。現に、日本の江戸時代においても江戸城大奥に奉公する奥女中は上から下まで将軍一人に操を立て、大奥にいる限りは生涯〝お清〟を通すという掟があった。
国は違えども、どこも封建社会の仕組みは似たようなものなのかもしれない。
この時代に飛ばされてきて、莉彩は色々なことを見、知った。二十一世紀の日本に生きる自分は、とても幸せなのだと改めて思った。
同時に、過去と現在の違いを知るにつけ、色んなことを考えるようになった。両班と呼ばれる貴族や王、王族たちというごく一部の特権階級に属する人々だけが絹を纏い、食べきれないような量のご馳走を口にする。
裏腹に庶民は幾ら働いても、その日のお米さえ満足に手に出来ない。ごく少数の上層階級だけが享楽と利を貪る世の中は、どこか間違っている。でも、莉彩には、世の中を動かしたり変えたりする力はない。この時代よりはるか後の時代に生きる、ただの無力な高校生にすぎない。それが何とも口惜しくはあったけれど、二十一世紀に帰ったら、莉彩はもっと一生懸命勉強しようと思った。
大学に進んで、福祉の勉強をして将来は介護関係の仕事につきたいと思うようになったのだ。これまで目標や夢もなく、ただ何となく学校に行って、何となく勉強したり遊んだりしていた自分が凄く恥ずかしかった。
