
約束~リラの花の咲く頃に~ⅢLove is forever
第2章 一人だけの結婚式
「大体、莉彩は礼儀作法からまず憶えなければならないため、日々の仕事に加え、暇があると崔尚宮の部屋に呼ばれて、猛特訓を受けることになった。
そのため、莉彩のスケジュールは物凄くハードだ。これでは、しばらくどころか、いつ自由時間を持てるようになるのか知れたものではない。
だが、何でも興味津々の莉彩にとっては、様々なことを習い憶えるのは愉しくてならなかった。考えてみれば、今、莉彩が体験していることはすべて、日本の女子高生である彼女が体験できるようなことではない。それが、何の因果か現代の日本から朝鮮王朝時代の韓国に飛ばされ、得難い体験をしている。
初めてこの時代に来たときには、絶望で奈落の底に突き落とされたように思ったが、今では、これも貴重な人生勉強だと思えるようになった。
むろん、帰るのを諦めたわけではない。莉彩の居場所はあくまでも二十一世紀の日本にあるのだ。父や母、慎吾を初め、泰恵や遥香の待つふるさとに一日も早く帰りたいという想いは変わるはずもない。
突然、姿を消した自分が現代でどのように思われているのか―。両親は心配して食事も喉を通らない状態が続いているかもしれない。それを考えただけで、心配で叫び出しそうになったが、今ここで、それを考えていても仕方ない。
いずれ時が満ちれば、ひと月余り前に時空の扉が突如として開いたように、この時代とあちらの時代が重なり、再び現代に戻ることができるかもしれない。その一方で、このまま手をこまねいていても良いのかという想いはあった。
十六歳という柔軟な思考力を持つ年頃、更に生来の聡明さもあって、莉彩は教えられたことは乾いた砂が水を吸い取るように、どんどん吸収してゆく。今はとりあえずは宮廷での生活に慣れることを心がけることに専念しようと思った。そうすれば、幾ばくかでも心が紛れるだろう。
その日、莉彩はリラの花の簪を挿していた。女官は皆、同じデザインの服―お仕着せを支給される。紅が入ってはいるが、全体的に地味なチマチョゴリだ。髪型は後ろで二本の三つ編みに編み、くるくるっと巻いて飾りで束ねる。実用的で動きやすい形だ。
やはり、王の后妃たちの服装は、これに比べると、かなり派手できらびやからしい。
そのため、莉彩のスケジュールは物凄くハードだ。これでは、しばらくどころか、いつ自由時間を持てるようになるのか知れたものではない。
だが、何でも興味津々の莉彩にとっては、様々なことを習い憶えるのは愉しくてならなかった。考えてみれば、今、莉彩が体験していることはすべて、日本の女子高生である彼女が体験できるようなことではない。それが、何の因果か現代の日本から朝鮮王朝時代の韓国に飛ばされ、得難い体験をしている。
初めてこの時代に来たときには、絶望で奈落の底に突き落とされたように思ったが、今では、これも貴重な人生勉強だと思えるようになった。
むろん、帰るのを諦めたわけではない。莉彩の居場所はあくまでも二十一世紀の日本にあるのだ。父や母、慎吾を初め、泰恵や遥香の待つふるさとに一日も早く帰りたいという想いは変わるはずもない。
突然、姿を消した自分が現代でどのように思われているのか―。両親は心配して食事も喉を通らない状態が続いているかもしれない。それを考えただけで、心配で叫び出しそうになったが、今ここで、それを考えていても仕方ない。
いずれ時が満ちれば、ひと月余り前に時空の扉が突如として開いたように、この時代とあちらの時代が重なり、再び現代に戻ることができるかもしれない。その一方で、このまま手をこまねいていても良いのかという想いはあった。
十六歳という柔軟な思考力を持つ年頃、更に生来の聡明さもあって、莉彩は教えられたことは乾いた砂が水を吸い取るように、どんどん吸収してゆく。今はとりあえずは宮廷での生活に慣れることを心がけることに専念しようと思った。そうすれば、幾ばくかでも心が紛れるだろう。
その日、莉彩はリラの花の簪を挿していた。女官は皆、同じデザインの服―お仕着せを支給される。紅が入ってはいるが、全体的に地味なチマチョゴリだ。髪型は後ろで二本の三つ編みに編み、くるくるっと巻いて飾りで束ねる。実用的で動きやすい形だ。
やはり、王の后妃たちの服装は、これに比べると、かなり派手できらびやからしい。
