
約束~リラの花の咲く頃に~ⅢLove is forever
第3章 接近~近づいてゆく心~
どうやら臨尚宮は、娘の躾の仕方を間違ったようだ。仮にも王のお側に侍る娘が、このような有り様では先が思いやられる。私が臨尚宮の代わりに躾をせねばならぬ。孔尚宮、鞭を持って参れ」
大妃の言葉に、孔尚宮が頷いた。
「はい」
孔尚宮が頷き、恭しく小さな錦の袋を捧げ持ってくる。袋を受け取った大妃は中から鞭を取り出した。
「裾を持ち上げよ」
ぞんざいに命ずる大妃を莉彩はぐっと睨みつけた。
莉彩はそもそもこの時代の人間ではない。幾ら相手が大妃といえども、ここまでの侮辱を受けるいわれはないのだ。
「何だ、その眼は。そなたはよほど性根をたたき直す必要がありそうだな」
大妃が眼顔で合図し、孔尚宮が莉彩に近寄ってきた。有無を言わせぬ力で肩を押さえつけられる。その隙にもう一人の女官が進み出て、莉彩のチマの裾をめくった。
ヒュッと厭な音が空をつんざいた。その瞬間、鋭い痛みが脹ら脛を走り、莉彩は思わず悲鳴を上げた。
大妃が鞭を振り上げ、ヒュッと音が鳴るとともに、再び痛みが襲う。じんじんと痺れるような痛みと、同時にひりひりと灼けつくような痛みが絶えない。
次第に莉彩は意識が朦朧としてきた。だが、無様に大妃の前で倒れるのだけはご免だという気持ちが、辛うじて今の彼女を支え、持ちこたえていた。
そんなことが何回か続いた時、突如として部屋の戸が荒々しく開いた。
「母上(オバママ)」
王が血相を変えて駆け込んできた。
「一体、何事でしょうか」
莉彩は最早、血の気を失って顔面蒼白であった。ふらつく身体を懸命に支えているのが傍目にも判る。
今にも倒れそうな莉彩を見、王が色を失った。
「これは―。莉彩!」
王は莉彩を押さえつける孔尚宮を烈しい眼で睨み据えた。
「孔尚宮、今すぐにその手を放せ」
いつも鷹揚な王がここまで怒りを露わにすることはかつて一度たりともなかった。王のあまりの逆鱗に、孔尚宮は仰天し、狼狽えながら手を放す。
大妃の言葉に、孔尚宮が頷いた。
「はい」
孔尚宮が頷き、恭しく小さな錦の袋を捧げ持ってくる。袋を受け取った大妃は中から鞭を取り出した。
「裾を持ち上げよ」
ぞんざいに命ずる大妃を莉彩はぐっと睨みつけた。
莉彩はそもそもこの時代の人間ではない。幾ら相手が大妃といえども、ここまでの侮辱を受けるいわれはないのだ。
「何だ、その眼は。そなたはよほど性根をたたき直す必要がありそうだな」
大妃が眼顔で合図し、孔尚宮が莉彩に近寄ってきた。有無を言わせぬ力で肩を押さえつけられる。その隙にもう一人の女官が進み出て、莉彩のチマの裾をめくった。
ヒュッと厭な音が空をつんざいた。その瞬間、鋭い痛みが脹ら脛を走り、莉彩は思わず悲鳴を上げた。
大妃が鞭を振り上げ、ヒュッと音が鳴るとともに、再び痛みが襲う。じんじんと痺れるような痛みと、同時にひりひりと灼けつくような痛みが絶えない。
次第に莉彩は意識が朦朧としてきた。だが、無様に大妃の前で倒れるのだけはご免だという気持ちが、辛うじて今の彼女を支え、持ちこたえていた。
そんなことが何回か続いた時、突如として部屋の戸が荒々しく開いた。
「母上(オバママ)」
王が血相を変えて駆け込んできた。
「一体、何事でしょうか」
莉彩は最早、血の気を失って顔面蒼白であった。ふらつく身体を懸命に支えているのが傍目にも判る。
今にも倒れそうな莉彩を見、王が色を失った。
「これは―。莉彩!」
王は莉彩を押さえつける孔尚宮を烈しい眼で睨み据えた。
「孔尚宮、今すぐにその手を放せ」
いつも鷹揚な王がここまで怒りを露わにすることはかつて一度たりともなかった。王のあまりの逆鱗に、孔尚宮は仰天し、狼狽えながら手を放す。
