
約束~リラの花の咲く頃に~ⅢLove is forever
第4章 約束
―この風景は―。
莉彩は息を呑んだ。今、眼の前にひろがる風景は、あまりにもあの場所に似ていた。すべての始まりとなったあの場所、莉彩が慎吾を待っていた橋のたもとの周辺と酷似している。
その時、少し後ろで聞き憶えのある深い声音が聞こえた。
「やはり、行ってしまうのか、私をたった一人、置き去りにして」
莉彩の身体が強ばる。
逢いたいけれど、逢いたくない人。
帰りたいけれど、帰りたくない時代。
いや、この瞬間にも、私の心は、この男をこんなにも求めている。
それは、怖ろしいほどの渇望だった。
「よく、ここがお判りになりましたね」
無理に素っ気ない口調で言うと、王が含み笑った。
「信頼できる内官の一人に、そなたの動向を見張らせていたからな。何か動きがあれば、直ちに連絡が来る」
それは、大妃から莉彩を守るためでもあったのだけれど、王は敢えて莉彩に告げなかった。
「どうしても帰るのか?」
莉彩は言葉にはせず、頷いた。
次の瞬間、莉彩の身体は背後から逞しい腕に抱きしめられていた。
「莉彩、行くな」
「何故、今になって、そのようなことを仰せになるのですか? ふた月もの間、私をずっと無視し続けておいでになって、今更」
莉彩の眼に涙が溢れた。
「それとも、また偉い方の気紛れで、私をからかってみたくなったのですか?」
莉彩の言葉に、王が声を固くした。
「そのようなことを申すのは止せ」
「殿下は、もう私なんかお忘れになったのでしょう? だから、私を無視なさっていたのではないですか」
莉彩の眼からとうとう大粒の涙が溢れ出し、莉彩の腰に回した王の両手にポトリと落ちた。
「莉彩、泣いているのか」
王の問いにも、莉彩は応えない。
突然、王が莉彩の身体を自分の方に向かせた。両肩に手を置いて、顔を覗き込んでくる。
莉彩は息を呑んだ。今、眼の前にひろがる風景は、あまりにもあの場所に似ていた。すべての始まりとなったあの場所、莉彩が慎吾を待っていた橋のたもとの周辺と酷似している。
その時、少し後ろで聞き憶えのある深い声音が聞こえた。
「やはり、行ってしまうのか、私をたった一人、置き去りにして」
莉彩の身体が強ばる。
逢いたいけれど、逢いたくない人。
帰りたいけれど、帰りたくない時代。
いや、この瞬間にも、私の心は、この男をこんなにも求めている。
それは、怖ろしいほどの渇望だった。
「よく、ここがお判りになりましたね」
無理に素っ気ない口調で言うと、王が含み笑った。
「信頼できる内官の一人に、そなたの動向を見張らせていたからな。何か動きがあれば、直ちに連絡が来る」
それは、大妃から莉彩を守るためでもあったのだけれど、王は敢えて莉彩に告げなかった。
「どうしても帰るのか?」
莉彩は言葉にはせず、頷いた。
次の瞬間、莉彩の身体は背後から逞しい腕に抱きしめられていた。
「莉彩、行くな」
「何故、今になって、そのようなことを仰せになるのですか? ふた月もの間、私をずっと無視し続けておいでになって、今更」
莉彩の眼に涙が溢れた。
「それとも、また偉い方の気紛れで、私をからかってみたくなったのですか?」
莉彩の言葉に、王が声を固くした。
「そのようなことを申すのは止せ」
「殿下は、もう私なんかお忘れになったのでしょう? だから、私を無視なさっていたのではないですか」
莉彩の眼からとうとう大粒の涙が溢れ出し、莉彩の腰に回した王の両手にポトリと落ちた。
「莉彩、泣いているのか」
王の問いにも、莉彩は応えない。
突然、王が莉彩の身体を自分の方に向かせた。両肩に手を置いて、顔を覗き込んでくる。
