
約束~リラの花の咲く頃に~ⅢLove is forever
第5章 想い
でも、どこにいてもどんな境遇にあっても、一生懸命に生きている自分をあの男に見ていて貰いたいから―、多分、他人(ひと)のためにできることなら、たとえ何の道に進んだとしても自分にもできることがあるはずだ。
与えられた仕事を頑張ることにより、何らかの形で社会に少しでも貢献できれば良いのではないかと思うようになった。
遠い時の彼方で生きるあの男に恥じない生き方をしたい。そう思って、自分に与えられた新しい職場、仕事に真摯に打ち込むことにした。
現在は勤務する会社から電車でふた駅のR町のマンションで気ままな一人暮らしを送っている。Y町には両親がいるが、実家に顔を見せるのはせいぜいが夏と正月の休みくらいで、なかなか子離れのできない母を大いに嘆かせていた。
それに、女の二十六歳という年令は何とも微妙ではある。二十代は仕事や自分の生活を十分に愉しみ三十代で結婚、出産する女性も増えている昨今、女の適齢期が二十四歳までだなどと主張する輩は流石にいない。
しかし、二十代前半は何も言わなかったどころか娘の結婚問題に関して無関心にさえ見えた両親が二十五歳を過ぎた辺りから俄に口煩くなってきたのは確かである。
それでもまだ父はマシな方で、母はたまに帰ってみれば、〝真田さんのところの博美ちゃんはね、良いお話が決まったそうよ。お相手は歯科医で―〟云々と小、中学校時代の級友たちの結婚話をまるで自分の手柄のように滔々と話すのだ。
むろん、その口調には、〝よそのお嬢さんは早々と良い縁付き先が見つかって羨ましい〟という母の気持ちが透けて見えている。
莉彩の中学時代からの親友である泰恵(やすえ)も去年の六月、二年間付き合ったという恋人と結婚したし、今一人の友人遥香(はるか)にも結婚を前提に付き合っている男がいるらしい。
泰恵の結婚披露宴でたまたま隣の席になった男―新郎の友人でさる有名家電メーカーに勤めている―から交際して欲しいと頼まれたりもしたが、莉彩は丁重に辞退していた。
―ごめんなさい。私、好きな男(ひと)がいるんです。
ただ断っただけでは到底納得しそうにない男に対して、莉彩はやむなくそう言った。そして、この言い訳は満更、全くの嘘や出たらめというわけでもない。
与えられた仕事を頑張ることにより、何らかの形で社会に少しでも貢献できれば良いのではないかと思うようになった。
遠い時の彼方で生きるあの男に恥じない生き方をしたい。そう思って、自分に与えられた新しい職場、仕事に真摯に打ち込むことにした。
現在は勤務する会社から電車でふた駅のR町のマンションで気ままな一人暮らしを送っている。Y町には両親がいるが、実家に顔を見せるのはせいぜいが夏と正月の休みくらいで、なかなか子離れのできない母を大いに嘆かせていた。
それに、女の二十六歳という年令は何とも微妙ではある。二十代は仕事や自分の生活を十分に愉しみ三十代で結婚、出産する女性も増えている昨今、女の適齢期が二十四歳までだなどと主張する輩は流石にいない。
しかし、二十代前半は何も言わなかったどころか娘の結婚問題に関して無関心にさえ見えた両親が二十五歳を過ぎた辺りから俄に口煩くなってきたのは確かである。
それでもまだ父はマシな方で、母はたまに帰ってみれば、〝真田さんのところの博美ちゃんはね、良いお話が決まったそうよ。お相手は歯科医で―〟云々と小、中学校時代の級友たちの結婚話をまるで自分の手柄のように滔々と話すのだ。
むろん、その口調には、〝よそのお嬢さんは早々と良い縁付き先が見つかって羨ましい〟という母の気持ちが透けて見えている。
莉彩の中学時代からの親友である泰恵(やすえ)も去年の六月、二年間付き合ったという恋人と結婚したし、今一人の友人遥香(はるか)にも結婚を前提に付き合っている男がいるらしい。
泰恵の結婚披露宴でたまたま隣の席になった男―新郎の友人でさる有名家電メーカーに勤めている―から交際して欲しいと頼まれたりもしたが、莉彩は丁重に辞退していた。
―ごめんなさい。私、好きな男(ひと)がいるんです。
ただ断っただけでは到底納得しそうにない男に対して、莉彩はやむなくそう言った。そして、この言い訳は満更、全くの嘘や出たらめというわけでもない。
