
約束~リラの花の咲く頃に~ⅢLove is forever
第5章 想い
だが、莉彩は哀しげに微笑んだだけだった。
第一、SF小説や映画でもあるまいに、タイムトリップして、はるか過去の―しかも歴史に名を残す有名人物と恋に落ちただなんて話しても、信じて貰えるとは思えなかった。
たとえ、理解力のある慎吾だとしても、事が自分の恋愛問題に関するとなれば、冷静に話を受け容れるのは難しいだろう。
ただ一つだけ、はっきりとしたことは、莉彩には心から愛する男性が現れた―、それだけだった。莉彩にはその事実だけで十分であったが、当の別れを突如として宣告された側の慎吾には到底、十分とは言いかねたに違いない。
慎吾を必要以上に傷つけまいとして、敢えて好きな男ができたとは言わなかったことが、彼のもどかしさをかえって強めたようだった。
―三年も付き合った俺に対して、莉彩は何の説明もなしで、黙って背を向けるのか?
振り絞るように言った慎吾の傷ついた表情が今でも眼裏に甦る。
慎吾のことを最後まで男として見ることはできなかったが、莉彩は彼を大切な友達だと思っていた。その大切な友人を傷つけてまで、選び取った恋。
しかも、その恋はけして叶うことのない見込みのない恋なのだ。それでも。
莉彩は後悔しない。たとえ未来永劫、二度と逢えなくても、莉彩はこの恋に生きると決めていた。生涯にたった一度きりの恋、ただ一人の男のために、これからの人生のすべてを捧げても悔いはないと思う。
恐らく、他の人から見たら、本当に気が狂っているとしか思われかねないだろうが。
コピー室で人数分の書類のコピーを取り終え、莉彩が総務課の自分のデスクに戻ったときのことだった。
片隅に忘れ去られたように置いてある携帯の着信音が鳴った。
ハッと我に返って携帯を取り上げると、それは電話ではなくメールだった。送信者を見ると、〝SHINGO〟となっている。それは、かつて慎吾がメールをやりとりする際、使っていたハンドルネームだ。
画面には〝突然、ごめん。以前、莉彩が使ってたメ―ルアドレスに宛ててメールしても一向に届かなくて、泰恵に電話して新しいヤツを訊いたんだ。今、駅前の花屋にいるんだけど、これから逢えないかな。ほんのちょっとで良い、時間は取らせない。大切な話があるんだ。慎吾〟と出ている。
第一、SF小説や映画でもあるまいに、タイムトリップして、はるか過去の―しかも歴史に名を残す有名人物と恋に落ちただなんて話しても、信じて貰えるとは思えなかった。
たとえ、理解力のある慎吾だとしても、事が自分の恋愛問題に関するとなれば、冷静に話を受け容れるのは難しいだろう。
ただ一つだけ、はっきりとしたことは、莉彩には心から愛する男性が現れた―、それだけだった。莉彩にはその事実だけで十分であったが、当の別れを突如として宣告された側の慎吾には到底、十分とは言いかねたに違いない。
慎吾を必要以上に傷つけまいとして、敢えて好きな男ができたとは言わなかったことが、彼のもどかしさをかえって強めたようだった。
―三年も付き合った俺に対して、莉彩は何の説明もなしで、黙って背を向けるのか?
振り絞るように言った慎吾の傷ついた表情が今でも眼裏に甦る。
慎吾のことを最後まで男として見ることはできなかったが、莉彩は彼を大切な友達だと思っていた。その大切な友人を傷つけてまで、選び取った恋。
しかも、その恋はけして叶うことのない見込みのない恋なのだ。それでも。
莉彩は後悔しない。たとえ未来永劫、二度と逢えなくても、莉彩はこの恋に生きると決めていた。生涯にたった一度きりの恋、ただ一人の男のために、これからの人生のすべてを捧げても悔いはないと思う。
恐らく、他の人から見たら、本当に気が狂っているとしか思われかねないだろうが。
コピー室で人数分の書類のコピーを取り終え、莉彩が総務課の自分のデスクに戻ったときのことだった。
片隅に忘れ去られたように置いてある携帯の着信音が鳴った。
ハッと我に返って携帯を取り上げると、それは電話ではなくメールだった。送信者を見ると、〝SHINGO〟となっている。それは、かつて慎吾がメールをやりとりする際、使っていたハンドルネームだ。
画面には〝突然、ごめん。以前、莉彩が使ってたメ―ルアドレスに宛ててメールしても一向に届かなくて、泰恵に電話して新しいヤツを訊いたんだ。今、駅前の花屋にいるんだけど、これから逢えないかな。ほんのちょっとで良い、時間は取らせない。大切な話があるんだ。慎吾〟と出ている。
