
約束~リラの花の咲く頃に~ⅢLove is forever
第5章 想い
「それから、俺がこんなことを言うのはおかしいかもしれないんだけど、莉彩、そいつと上手くいってるのか?」
慎吾の言う〝あいつ〟というのが莉彩の好きな男だというのはすぐに判る。
莉彩は小さく息を吸い込み、やっとの想いで笑顔を作った。
「だから、私は、やっぱりニューヨークには付いていけない。和泉君なら、私のような何の取り柄もない平凡な女じゃなくて、もっと素敵な女(ひと)が見つかるわ」
「何だよ、それ。それなんじゃ、全然、応えになってないぞ」
慎吾は肩をすくめ、笑いながら言った。
が、すぐにその笑顔を曇らせる。
「何だかな、今のお前を見てたら、少しも幸せそうじゃないんだよ。格好つけるわけじゃないけどさ、俺は莉彩が本当に幸せになれるのなら、涙を呑んで身を退く覚悟はいつだって、できてる。でも、今のお前って何だか、苦しい恋をしてるように見えるんだ。俺と同じで、手の届かないものに焦がれてるような、そんな感じかな。だから、そいつとあんまり上手くいってないんじゃないって、勝手に想像したんだけど」
慎吾が心底から心配してくれているのが伝わってきて、莉彩は思わず熱いものが込み上げた。
「相変わらず優しいんだ、和泉君。私はいつも思ってたのよ。私は和泉君と違ってスポーツも勉強もどれもパッとしないし、特に綺麗ってわけでもないでしょ。なのに、何で、和泉君みたいに格好良い彼がいるのかなぁって、自分のことなのに他人事みたいに不思議に思ってた。和泉君には、私はふさわしくないよ。和泉君と並んで歩いてたら、ピッタリの女だねって誰もが振り返るくらいの素敵な子がどこかにいるはずだから」
「おっと、そんなことを言うのはナシだぜ。俺は十年以上前から、莉彩だけをずっと見つめてきたんだ。そんな男に私よりもあなたにふさわしい女がいるなんて逃げ口上は通用しないよ。それから謝るのもナシ。莉彩、お前な。自分がどれくらい残酷なことを言ってるか、全然自覚してないだろ?」
わざと冗談めかして言っているのが慎吾なりの精一杯の思いやりなのだ。
「―ごめん」
謝るしかない莉彩を、慎吾が軽く睨む。
「だから、言っただろ。謝るのは止してくれ」
「判った」
莉彩は微笑んで頷いた。
慎吾の言う〝あいつ〟というのが莉彩の好きな男だというのはすぐに判る。
莉彩は小さく息を吸い込み、やっとの想いで笑顔を作った。
「だから、私は、やっぱりニューヨークには付いていけない。和泉君なら、私のような何の取り柄もない平凡な女じゃなくて、もっと素敵な女(ひと)が見つかるわ」
「何だよ、それ。それなんじゃ、全然、応えになってないぞ」
慎吾は肩をすくめ、笑いながら言った。
が、すぐにその笑顔を曇らせる。
「何だかな、今のお前を見てたら、少しも幸せそうじゃないんだよ。格好つけるわけじゃないけどさ、俺は莉彩が本当に幸せになれるのなら、涙を呑んで身を退く覚悟はいつだって、できてる。でも、今のお前って何だか、苦しい恋をしてるように見えるんだ。俺と同じで、手の届かないものに焦がれてるような、そんな感じかな。だから、そいつとあんまり上手くいってないんじゃないって、勝手に想像したんだけど」
慎吾が心底から心配してくれているのが伝わってきて、莉彩は思わず熱いものが込み上げた。
「相変わらず優しいんだ、和泉君。私はいつも思ってたのよ。私は和泉君と違ってスポーツも勉強もどれもパッとしないし、特に綺麗ってわけでもないでしょ。なのに、何で、和泉君みたいに格好良い彼がいるのかなぁって、自分のことなのに他人事みたいに不思議に思ってた。和泉君には、私はふさわしくないよ。和泉君と並んで歩いてたら、ピッタリの女だねって誰もが振り返るくらいの素敵な子がどこかにいるはずだから」
「おっと、そんなことを言うのはナシだぜ。俺は十年以上前から、莉彩だけをずっと見つめてきたんだ。そんな男に私よりもあなたにふさわしい女がいるなんて逃げ口上は通用しないよ。それから謝るのもナシ。莉彩、お前な。自分がどれくらい残酷なことを言ってるか、全然自覚してないだろ?」
わざと冗談めかして言っているのが慎吾なりの精一杯の思いやりなのだ。
「―ごめん」
謝るしかない莉彩を、慎吾が軽く睨む。
「だから、言っただろ。謝るのは止してくれ」
「判った」
莉彩は微笑んで頷いた。
