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黒猫と白薔薇

第1章 淡い日常

ベッドの上はあっという間に童話の本で、いっぱいになる。


 シアが持ってきた本は、どれも埃をかぶっていた。あらためて見ると時の流れを感じさせるほど、劣化していた。もう少し大切に扱えばよかったかと今さらになって思う。


「これ読んで」


 ぽすんとこちらに体重をかけて、倒れてくるシア。


「魔女のお菓子屋か。懐しいな」

 

 本当に在るのだと信じたし、カラフルなお菓子を食べてみたいと思った頃がある。刀をふるうずっと前――異国の物語に夢中だった頃、よく八代にせがんで買ってもらった。

 
 古今東西様々な物語を取り寄せてくれた。お金に対して厳しいが、この時だけは散財してくれる。希少なものすら八代にはなんてこともないようで、すんなり手に入れてしまうから驚きだ。

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